KT-80のリニューアル-01

1980年に設計したKT-80のメンテナンスと音質改善の依頼を受けました。折角の機会なので、この時の作業内容で再度保管してあったKT-80を使ってまとめました。(合わせて2台を改造しました。)

はじめにどんな機種だったかを復習します。フロントエンド4連(単同調−MOS FET RF AMP−複同調-MOS FET MIX-IFTと局部発振回路+Buffer AMP)-群遅延平坦形セラミックフィルタ(CF)-1石AMP-CF-IC AMP-CF-HA1137W(AMP、Sメーターと制御信号用クォードラチャー検波)-AN610(第二局部発振回路とミキサー、MC1496 Double-Balanced Mixer類似品)-パルスカウント検波器-ベースバンドフィルター-HA12016(ステレオ復調とオーディオアンプ)-19/38kHzローパスフィルター−オーディオ出力 で受信性能と音質性能がバランスした当時の中級機クラスの性能に相応しい構成となっています。

受け取りましたKT-80は、長い間使われていなかったようで、バリコンの軸受けが接触不良を起こし周波数が飛ぶ、目盛板と指針がずれている、Sメーター最大でチューンドLEDが点灯しない、パワースイッチの照明が点かない等の症状がありましたが、幸い受信機能は動作していました。

バリコン軸受けの接触不良は、丹念にチューニングアップダウンを繰り返したところ雑音が皆無にはなりませんでしたが実用となる程度には回復し一安心でした。今後、使用頻度が上がれば軸受けの酸化皮膜がさらに取れ、良い状態になります。

この時代のアルプスのバリコンは細心の注意が払われていますので動作を繰り返すことで復活できました。

古いチューナーで、Sメーターは振れるのに音が出ない、ミュートを解除すると音が出るがステレオにならない、シンセサイザーの場合では、100kHzずれて受信するなどの症状があります。これらの症状は、FM検波器の調整がずれて発生します。KT-80の数年前からFM検波器はICに内蔵されたクォードラチャー検波が主流となりました。ICからSメーター、Tメーターとミューティングの信号が容易に取り出せチューナーに必要な制御が簡単に行えるようになりました。しかし、同調回路を使用するために経時変化により周波数がずれて不具合を生じます。同調周波数10.7MHzに対し、ミューティング検出幅を+/-50kHz程度に設定していますので、周波数精度は最悪でも+/-0.47%以下、実際には+/-10kHz(+/-0.093%)以下でないとなりません。チューナーの中で最も精度が要求される同調回路の一つです。

一般的なクォードラチャー検波器から出力を得ている場合、検波コイルの一次側を調整しますとひずみ率が変化しセパレーションも劣化してしまいますので、FM信号発生器等の測定器を用い二次側を最適化しないと最良の性能に追い込めません。幸い、KT-80はIC HA1137Wによるクォードラチャー検波は制御信号を使用するだけで、音声信号は並列に設けられたパルス検波器の出力を用いていますので、再調整しても性能の劣化は起きませんし、テスターだけで簡単に調整することが出来ます。

しかし、以下の調整・改造は一例を示すだけで、性能機能を保証するものではありません。場合によっては取り返しのつかない結果を招く恐れもありますので、自己責任で実施してください。