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| 敷衍 ふえん amplification | ||||||
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| ――『東京ミュウミュウ』2巻50ページ (征海未亜・吉田玲子/講談社 コミックスなかよし) |
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| 敷衍は、1つの話題についてカタチを変えながらくり返す、というレトリックです。 | |||||
| 「敷衍」では、伝えたい対象のことをくわしく述べることになります。この「くわしく述べる」ということによって、伝えたいその対象を強調する効果がえられます。たしかにレトリックを使えば、たいてい強調という効果をえることができます。ですが、「敷衍」ばあいでの「強調」という効果には、他とは違うポイントが1つあります。それは、「話し手(書き手)は、このことを強調したいんだ」というメッセージを伴って、伝わりやすいということです。 | |||||
| 「敷衍」では同じ題材とか似た題材が、くり返し続けて話題に出ます。このことから、1つのパターンでの伝えかたでは十分には伝わらなかったときにも、何度も似た内容が話に出ることで深く理解することができるようになります。 | |||||
| 「敷衍」では、1つのものごとを、より具体的に描きだしていくことになります。このことから聞き手(読み手)は、伝えようとしていることがらを鮮明にイメージすることができるようになります。 | |||||
| 「敷衍」の使いかたは、大きく2つに分けられます。その1つ目は、伝えたい核となるテーマに近いことがらを、話に組みこむというものです。話の主題とつながりのある、隣りあっているような内容のことを述べていくともいえます。 | |||||
| 「敷衍」の、もう1つの使いかた。それは、伝えたいテーマを別の言いかたに変えながらくり返すというものです。伝えたいものごとの核となっている部分について、いろいろな観点から迫っていくことで話を広げるというものです。 | |||||
| ※使いかたについては、【レトリックを深く知る】のところに細かく書いてあります。ですので、そちらもあわせてご覧ください。 | |||||
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| 例文は『東京ミュウミュウ』2巻から。 主人公は、「いちご」。 「いちご」たちは、「カフェ〝ミュウミュウ〟」で一緒に働いている。だが、実は「キメラアニマ」という敵をやっつけるという「正義の味方」。そのうち、5人目の仲間ではないかという女の子を、雑誌のモデルに見つける。その時の「みんと」の言葉が引用のシーン。 ごらんあそばせ!というふうに、どうみても長い。引用している私(サイト制作者)が、キーボードの叩きすぎで疲れてしまうくらい、とんでもなく長い。このモデルの美しさを、「みんと」はいろいろ挙げています。ですが、その挙げる方法がふつうではありません。必要以上に、余すところ無く述べています。 このように、1つのテーマを伝えるために、くまなく述べていくレトリックが「敷衍」です。 |
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『ちはやふる』2巻からの引用です。 千早は、「かるた部」をつくるために駆けまわっていた。そんな様子を影から覗いてうかがっている子がいるのに、千早は気づく。 そこで、その子に「かるた部」に興味があるのかといった話を聞くために声をかける。 といったかんじで。 こんなふうに千早に問いかけられた子(あとで奏という名前だと分かる)は、つぎのように返事をします。 返事をするのですが、これがヒドく込みいったものになっています。 「言うまでもなく 小倉百人一首はから始まって、 見つけられずに――――……」で終わっています。その長さは319文字もあります。もしもこの長さをアナウンサーが話すとしたら、1分近くかかるものとなります。 しかも千早が声を差しはさまなければ、まだまだ続いていたと思われます。 かるたに興味があるのかどうか。かるたが好きかどうか。その質問に答えるにしては、むやみに長いとさえいえるでしょう。 その意味で「必要以上にやたら長い」と言えます。ですので、「敷衍」というレトリックに含まれるといえそうです。 ただ。 せっかく奏は、319文字も使って「かるたの好きなところ」を語ってくれているのですが。それは残念ながら、「競技かるた」のことを考えている千早とは違ったものでした。 ですので細かく語ったにしては、結果としてあまり役立つものではなかったようです。 |
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| その昔ローマに、クインティリアヌスという修辞学者がいました。古代ギリシア・ローマの修辞学を完成させたと評価されるような、えらい人です。 で、このページで扱っている「敷衍」というレトリック用語。これは、そのクインティリアヌスが発明したものです(amplificatioは、ラテン語で「増幅・拡張」の意味です。) クインティリアヌスは本の中で、つぎのように述べています。この「敷衍」というレトリックを使うためには、4つの方法がある。「漸層・増大」をするばあい、「比較表現」を使うばあい、「ほのめかす」ばあい、ことばを「積みかさねる」ばあい、の計4つ。 これはたしかに、2000年近く前のローマ人が考え出したリクツです。けれどもこのリクツは、現代の日本人が「敷衍」というレトリックを理解するばあいであっても十分に役立ちます。 ですので、 これより下では、クインティリアヌスがいう「4つの方法」を順に見ていくことにします。 |
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| まず、1つめ。これは、話を漸層したり増大したりするというパターンです。 伝えたいテーマにかんすることがらを、だんだんとコトバが強くなるように並べる。段々と盛りあがるように話を進め、話を広げていく。そのことによって、「敷衍」を実現するというものです。 なのでこれは、 「漸層法」というレトリックを使うものだ、と言いかえることもできます。 |
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| 2つめのこれは、まず似たような関係にあるものごとを出してくる。その上で、それと比べながら話を説きすすめるものです。 話したいテーマと似たような部分を持っている事がらを、用意する。そしてその用意した事がらを、話したいテーマと照らし合わせて比べる。時には、比べることによって2つのあいだの違いを際だたせていく。そういったことでつくられる「敷衍」です。 これについては、「比較法」を用いるものだと言いかえることもできます。 |
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| さらに、3つめ。これは、伝えたいテーマに回りくどく言いあらわすというものです。 核心となる点を、正面から衝くということをしない。メッセージの中心から少しはなれた、けれども関わりあいのあることがらを話していく。たしかに直接には関係しないことがらだけれども、それについて長々と語っていく。そのことで、話をふくらませて「敷衍」を仕立て上げるというものです。 ですのでこれは、「迂言法」というレトリックを使うものだと言いかえることもできます。 |
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| さいごに、4つめ。この方法は、伝えたいことに意味がよく似たことばを並べるというものです。 語りたいものごとを伝える、そのための手段として使われることば。それは、1通りだけではありません。法律の条文でもないかぎり、いろんな言いかたができるはずです。そういった、思い浮かぶ「いろんな言いかた」を、何個も積みかさね並べあげる。それが、このパターンです。 ですので、 さいごのこれは、「列挙法」というレトリックを使うものだと言いかえることもできます。 |
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| 上に書いたように、 「敷衍」というレトリックは、「漸層法」「比較法」「迂言法」「列挙法」といったいくつものレトリックを合わせもったものだといえます(ちなみに、もっと細々と分類した人もいます)。 ですので、この「敷衍」というレトリックは、ことばづかいの細かな部分を考える技術ではありません。もっと、大きな視点をもったものです。考えを伝えるためにたどる、話の進めかたを考えるうえで役に立つものです。 |
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| 敷衍・敷衍法 | ||||
| 拡充法 | ||||
| 増幅法、増強法、増大法、増大誇張、拡張 | ||||
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| 「auxesis」は、このページで扱っている「敷衍」と同じ意味で使われるばあいと、そうでないばあいがあります。2とおりの意味で、使われることがあるのです。 1つは、「敷衍」の意味として。このばあいには、このページで扱っている「敷衍(amplification)」と同じことがらを指すレトリック用語となります。そしてもう1つは、「過大誇張」の意味として。このばあいには、「過大誇張法」のページで説明しているものをあらわしていることになります。 なおこの点については、『レトリック事典』の「3-1-3-1《過大誇張》」にくわしく書かれています。 |
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| 列叙法、列挙法、漸層法(広義の)、漸層法(狭義の)、類義累積、点描法、揃物 | |||
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| 「敷衍」を使うときに利用できそうな技術の、細かい分類が知りたいときには。この本に、くわしく書かれています。 | |||
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| 奏のセリフは、638バイトでした。 全角文字のばあい2バイトで1文字なので、638÷2=319文字と計算しておきました。 見てのとおり半角数字が混ざっている(そして半角文字は1バイト)なので、実際にはちょっと文字数が増減するかもしれないんだけれど。まあ、だいたいそんなもんということで。 |
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