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| 漸降法 ぜんこうほう anticlimax | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 『天正やおよろず』1巻137ページ (稀捺かのと/エニックス GANGAN WING COMICS) |
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《定義》 漸降法は、だんだん言葉を弱めていくレトリックです。 つまり、次第にトーンダウンしていくというものです。言いかえれば、表現を、強いものから弱いものに、または深いものから浅いものに、もしくは大きなものから小さなものに、段々と調子を弱めるものです。ようするに、ことばの順を追って、次第に勢いをおとろえさせるものです。 この「漸降法」の例としては、 十で神童、十五で才子、二十過ぎればただの人といったようなものが、あげられます。順を追ってだんだんと、トーンダウンしている表現だといえます。 なお。 この「漸降法」は、まれに「下降的漸層法」と呼ばれることもあります。 《例文を見る》 引用は、『天正やおよろず』1巻から。 暦は天正、のちに安土時代と呼ばれるころ。この時代には、「喰(じき)」と呼ばれる魔物がよみがえろうとしていた。 その「喰」に立ち向かおうというのが、このお話のメインの登場人物。主人公の「ライル」と、「薙刃(なぎは)」「鎮紅(しずく)」「迅伐(はやぎり)」という3人の少女。 なのですが、これまた引用した部分は、そういった設定とはあまり関係ありません。 では、一体どういう場面なのかというと、次のようになります。 甘味処「さくら亭」で、リニューアルオープン記念目玉イベントがはじまった(130ページ)。このイベントは、素人が「だんご」を作って、そのできばえを競争する、というもの。 「ライル」たちメインキャラの4人も、このイベントに参加することにする。一位を勝ち取った人に贈られる景品になっている「豪華温泉ご招待」。これに、つられたみたいです。 で、4人それぞれの作りかたを見てみる。すると、「ライル」が「だんご」を作る速さは、ものすごい。たちまち、すごい量になる。 それを観ていた人々の声が、「漸降法」になっていると考えます。 はじめは、 おお さすがというように、ほめています。ですが、 さすが こり性!!のあたりから、段々と雲行きがあやしくなっていきます。で、 さすが 神経質!!というあたりまでくると、もうこれは「ほめことば」ではなくなっています。そして最後には、 さすが 胃炎持ち!!とまで言われてしまいます。 このように、「さすが」とほめていたことばが段々と弱まって、最後には「胃炎持ち」とまで言われてしまいます。このことばのならび方を、「漸降法」とします。 《レトリックを深く知る》 【1.「漸層法(広義)」との関係】 この「漸降法」は、「漸層法(広義の)」の小分類のひとつに当たると位置づけることができます。 つまり。 おおきく、「漸層法(広義の)」と呼ばれるレトリックには、 漸層法(狭義の):ことばを、段階を追って強めていくもの(もっとも典型的な「漸層法」)という、2つのパターンがあるということになります。 くわしくは、「漸層法(広義の)」のページを、参照してください。 【2.「漸層法(狭義)」との関係】 また「漸降法」は、ちょうど「漸層法(狭義の)」を逆転させたものにあたります。 そのため、原理としては「漸層法(狭義の)」と「漸降法」は、同じようなものということができます。したがって、表現によっては「漸層法(狭義の)」なのか「漸降法」なのか、はっきり区別するのが難しいものもあります。 ですが。 いちおう理屈としては、つぎのようなことがいえます。それは、
このことを、もうすこし分かりやすくするために。 ひとつ、例をあげてみます。 引用は、『魔法先生ネギま!』1巻から。 主人公は、ネギ。10歳。イギリスで、魔法使いの修業をしていた。 そして、その修業の締めくくりとして。日本で英語の先生をするように、という指示が出る。 そういったわけで。わずか10歳なのに、先生ということになった。しかも、日本で英語を教える相手は、うら若き女子中学生。 そして、アスナ。彼女は、その「うら若き女子中学生」のうちの一人。そして、かいつまんでいえば「年上が好き」。それは、ウラを返せば「ガキがキライ」ということになる。 そのこともあって、ネギ(10歳)が担任になると知って、猛烈に抗議して怒りをあらわにする。それが、引用のシーンです、 チビでマメでま、つまり。「ガキがキライ」なのです。 ここで問題としたいのは。 この表現が、いったい「漸層法(狭義の)」と「漸降法」の、どちらであるというかということです。 結論をいえば。これは、「漸層法(狭義の)」にあたります。つまり、表現のトーンを次第に強くする、というパターンのほうなのです。 つまり、ここでアタマに置いておかなければいけないことは。けっして、表現している中身を見て「背が低くなっている」ということに、まどわされてはイケナイということです。 もちろん。 「チビ」と「マメ」と「ミジンコ」の3つで、大きさをくらべれば。あきらかに「だんだんと大きさが小さくなっている」。いいかえれば「だんだんと背が低くなっている」はずです。 ですが。 ここで、アスナが主張していることは。あくまで、「背が低い」ということ(を非難するというもの)です。ちょっと分かりにくく書けば。アスナが言いたいのは、「背の高さ」ではなくて「背の低さ」なのです。 したがって。ここで使っているアスナのセリフは、 (×) メッセージのテーマとなっている「背の高さ」というものが、だんだんと弱くなっている。と考えて、「漸降法」にはしません。 そうではなくで、 (○) メッセージのテーマになっている「背の低さ」というものが、だんだんと強くなっている。と考えて、「漸層法(狭義の)」というほうになります。 【3.漸降法の効果】 ま。 いちおう、上に書いたようなかんじで分けることになります。 …ですが。 このように考えると。つぎの2つのことがいえます。 1.じつのところ、「漸降法」にあてはまる例は、ほとんどない。 ほとんどのばあい、人はなにか自分のもっている考えかたを伝えるために、ことばを並べます。そして、よりよくメッセージを伝えるためには、いちばん最後にくることばを、いちばん印象的にしたほうがいいのです。 そしてそのためには、「だんだんと調子を強くする」という方法をとることになります。それはつまり、「漸降法」ではなく「漸層法(狭義の)」になるのです。 そのため。「漸降法」は、ほとんど見かけません。 2.「漸降法」は、表現をおもしろくする効果がある。 というか。「漸降法」には、表現をおもしろくする効果くらいしかありません。 いちばん最初に例文としてあげた、 十で神童、十五で才子、二十過ぎればただの人というのも。世の中の考えかたに、からかい半分の視線を向けているといえます。 『レトリックの体系』などを書いている中村明氏が、いろんな本で「漸降法」の例としているのは。 俺は浮気はしない たぶんしないと思う しないんじゃないかな ま、ちょっと覚悟はしておけというもの。もちろん、さだまさしの「関白宣言」にあるフレーズです。(作詞・作曲:さだまさし) この例文でも。やっぱり、滑稽さを出してくるといったものです。というかこの歌詞を、だんだんトーンダウンして滑稽さを出している「漸降法」と読むことのできない人。そういった人たちが、この歌詞にたいして騒動を起こすことになる。 とにかく。 この「漸降法」では、コミカルさを出すということはできます。ですが、マジメに語ることはできません。 【4.ちょっとした用語の不統一について】 なお、
この用語をどのように区別するかについては、統一されていないように思われます。そもそも、日本語のほうには3つの用語があるのに、英語のほうには2つしか用語がない。そういったことからみても、まだ統一された考えかたがない、ということを物語っています。 この点についてこのサイトでは、次のように区別することにします。 「頓降法」(=bathos)は、ことばが段々と盛り上がっていったあとに、最後で急にストンと落とすというレトリック。 「漸降法」(=anticlimax)、は、ことばが段々と弱まっていくというレトリック。 そして、あまってしまった「反漸層法」については、「漸降法」の別の呼び方だということにします。 ただしこの区分は、あくまでも、ひとつの考えかたです。他の人が書いた本だとか、他の人が作ったサイトでは、違った説明がされている場合があります。 ですので、その解説をしている人が、どのような区別をしてレトリック用語を使い分けているか。そこのところを、よく見きわめて下さい。 【5.ちょっとした用語の不統一について――つづき】 また、『レトリック事典』によると、 anticlimaxというレトリック用語には、この「漸降法」とは違った意味もあるらしい。つまり、まるで「山」のように、だんだん登っていって頂上に着いたら今度はだんだん降りてくる。そういったものも、anticlimaxに含めるらしい。 …分類するのが、さらに混乱するのですけれども。 |
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| 関連項目→列叙法、漸層法(広義の)、漸層法(狭義の)、連鎖漸層法、頓降法、飛移法、変態法、頓旋法、転折法 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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