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換称 かんしょう antonomasia
――『GUNSLINGER GIRL』1巻30~31ページ(相田裕/メディアワークス 電撃コミックス)
トリエラ あれ?
ヘンリエッタって
そんなに甘党だったっけ」
ヘンリエッタ あ、うん…
最近あまり甘く
感じなくてね
それでつい
お砂糖を足しちゃうの」
トリエラ よし 今日から
ヘンリエッタを
砂糖女と呼ぶ
ヘンリエッタ うう」
――『GUNSLINGER GIRL』1巻30~31ページ
(相田裕/メディアワークス 電撃コミックス

 《定義》

換称は、「本当の名前のかわりに通称・あだ名で呼ぶ」、またはその逆に、「特定の人を呼ぶことばをつかって通称・あだ名とする」、というレトリックです。

具体的には、
  1. そういったタイプの人(物)を一般的にあらわす言葉(あだ名)の代わりに、
    特定の人(物)をあらわす言葉をつかうばあい
     ↓
    「ドン・ファン」という言葉をつかって「女たらし」を意味するとき。
    ほかには「小町」で「美人」、「銀座」で「繁華街」、「ネロ」で「暴君」を意味するときなど

  2. 特定の人(物)をあらわす言葉の代わりに、
    そういったタイプの人(物)を一般的にあらわす言葉(あだ名)をつかうばあい
     ↓
    「太閤」という言葉をつかって「豊臣秀吉」を意味するとき。
    ほかには「キリスト」で「イエス」、「大師」で「弘法大師空海」、「ブッダ」で「ゴータマ」を意味するときなど
の2通りがあります。表現あるいは内容のどちらかに「特定の人をあらわす言葉」つまり「固有名詞」が用いられることを特徴とします。

このレトリックは、「代名法」と呼ばれることもあります。



 《例文を見る》

引用は、『GUNSLINGER GIRL』1巻。

主人公は、ヘンリエッタ。

ヘンリエッタは紅茶を飲むために、お砂糖をドボドボとティーカップに入れる。それを見ていたトリエラから
砂糖女と呼ぶ
と命名されてしまいました。

まあ、実際には会うたびに「砂糖女」と呼ばれたわけでもないようです。

また、「砂糖女」ということばが「そういったタイプの人を一般的にあらわす言葉」なのかも疑問です。つまり、たくさん砂糖を使う女の子を「砂糖女」と呼ぶのがふつうに使われるようなタイプのものかどうかはナゾです。

なので、厳密な意味で「換称」の例ではないのかもしれません。

でもそこは、「ヘンリエッタ萌え~」の精神で、大目に見ましょう。ヘンリエッタが登場できたので、よしということにしましょう。



 《レトリックを深く知る》


 【1.「換称」は「提喩」の特殊なもの】

このページで扱っている「換称」は、「提喩」の特殊な例にあたります。
提喩」というのは、かんたんにいうと、2つの言葉が「上位」と「下位」という関係になっているもののことです。いいかえれば、2つの言葉が「大分類」と「小分類」という関係にあるもののことです。

さて。
今回の、「ヘンリエッタ」と「砂糖女」の例で確認してみましょう。

すると。「砂糖女」が大分類で、「ヘンリエッタ」がその小分類にあたることが分かります。つまり、「砂糖女」と「あだ名」をつけられるような性格を持った人というグループのうちの1人が、「ヘンリエッタ」という「特定の人」だというわけです。

パソコンを持っている人にかぎっていえば。「砂糖女」という「フォルダ」の中に、「ヘンリエッタ」というファイルがあるという関係。そんなふうに説明すると、分かりやすいかもしれません。

なお。
この引用した部分のように。「あだ名」として働くばあいの「換称」は、時として親しさをあらわすことがあります。


 【2.「換称」を使う効果】

「換称」というレトリックを使う理由。または、「換称」というレトリックを使うことによる効果。
  • おなじ名前が、何回も出てくるのを防ぐため
    (とくにヨーロッパ系の言語では、何度も言葉が出てくるのは嫌われる傾向があるので)

  • 本当の名前で呼ぶと、宗教的な理由などでタブーとなるため
    (これは、「あだ名を使う」タイプのばあいに当てはまることがおおい)

  • 詩を作るときに、幻想的なかんじを出すため
こういったあたりが、「換称」を使う目的だといえます。


 【3.日本語には「換称」が少ない】

と、書いてきたわけなのですが。
『言葉は生きている』(聖文社/中村保男)によれば、日本語には、この「換称」が少ないそうです。
そこへゆくと英語には沢山ある。シンデレラは「玉の輿に乗った女」、シャイロックは「冷酷な高利貸し」、ソロモンは「賢人」、ネロは「暴君」、ヒットラーは「独裁者」、ダニエルは「名裁判官」、ロミオは「色男」、ドン・ファンやカザノーヴァは「女蕩し」、ドン・キホーテは「空想家」、ジェザベルは「悪女」といった具合で、きりがない。
とのことです。

そういえば、とある掲示板で、
ここに並んでいる人たちは、みんな国が違う。
なのに、「英語には…」というように「英語」に限定して話をするのはおかしい
と書いてあるのを見ました。まあ、たしかにそういう気もしますが、私(サイト作成者)としては原文をそのまま引用しておくことにします。ようするに、1つ1つの「換称」が、どの言語で使われているのかを調べるのがメンドウなだけなのですが。

それはともかく。
このページの最初に書いた、
  1. そういったタイプの人(物)を一般的にあらわす言葉(あだ名)の代わりに、
    特定の人(物)をあらわす言葉をつかうばあい

  2. 特定の人(物)をあらわす言葉の代わりに、
    そういったタイプの人(物)を一般的にあらわす言葉(あだ名)をつかうばあい
の中でも、とても日本が発祥とは思えないような「ドン・ファン」「ネロ」「ブッダ」「キリスト」というものが並んでいます。
ようするに、日本語で「換称」の例をいくつも挙げるのは、かなり難しいということです。

このようなことから見ても、日本語には「換称」が少ない、と言えそうです。


 【4.「もともとの換称」と「近代からの換称」】

かなりマイナーな、けっこうどうでもいいこと。

「もともとの換称」は、
  1. 特定の人(物)をあらわす言葉の代わりに、
    そういったタイプの人(物)を一般的にあらわす言葉(あだ名)をつかうばあい
のタイプのことをいいました。

つまり、「本名」をいうかわりに、「あだな・通称」をつかうこと。こちらが、もともとの(古代ギリシアやローマの時代でいう)「換称」でした。

ですが。
「換称」が、「提喩」にふくまれるものであるということから。

近代に入って、
  1. そういったタイプの人(物)を一般的にあらわす言葉(あだ名)の代わりに、
    特定の人(物)をあらわす言葉をつかうばあい
というタイプのほうについても、おなじく「換喩」と呼ぶようになりました。
関連項目→提喩愛称語
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