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語頭音消失 ごとうおんしょうしつ aphaeresis
――『ごくせん』1巻97~98ページ(森本梢子/集英社 YOU COMICS)
警察官 こらーっ
そこで
何やってるっ」
――ここ1コマ省略します――
ヤンクミ サツだっっ」
(ばっ)
サツだっ
わんわんだよ
ちっくしょうっっ」
おいっサツだぞっ」
わーかってるよ
うるせ――っっ」
――『ごくせん』1巻97~98ページ
(森本梢子/集英社 YOU COMICS)

 《定義》

語頭音消失とは、ことばの先頭部分を省略するレトリックです。
つまり、語句の先頭に来るはずの音を、はぶことによってなくすものです。

一般に「語頭音消失」を用いるのは、それによって言葉の「音」の数を減らし、より使いやすくするためだと言えます。

「アルバイト」の「アル」が消えて「バイト」だけになったりするのが、この例にあたります。この「バイト」のように、「語頭音省略」をした「バイト」のほうが、もはや普段使うの形になりつつあるものもあります。

この「語頭音消失」は、「語頭削除」とか「頭部省略」とも呼ばれます。



 《例文を見る》

引用は、『ごくせん』1巻から。

主人公は、山口久美子(通称:ヤンクミ)。

彼女は、すごい人。なんと、任侠集団の「黒田組」の四代目。そのヤンクミが新しく先生となり、高校に赴任することになる。しかしそこは、“絶滅寸前の「つっぱり高校生」が まだ のし歩いている”(10ページ)という、危ない学校。そこで、新人教師の教育の方法とかを校長先生たちが見学する、という「研究授業」が行われることとなる。

しかし、研究授業の当日。クラスの生徒全員が、屋上にエスケープ。そこで、教室に戻ってもらうというかわりに、慎という男子生徒とタイマンで勝負するハメにおちおいる、ヤンクミ。
で、その決闘場面が、引用のシーンです。
サツだっっ
サツだっ
わんわんだよ
ちっくしょうっっ
おいっサツだぞっ
と、「サツ」というのが連発されています。説明するまでもなく、この「サツ」というのは「警察」の意味です。「ケイサツ」の「ケイ」が落っこちて、「サツ」になった。この部分が「語頭音消失」にあたります。



 《レトリックを深く知る》


 【1.「短縮語」のグループ】

「語頭音消失」は、「短縮語」にふくまれるレトリックです。「短縮語」にふくまれるものとしては、ほかに、
  • 言葉の最後の部分を省略するのは「語尾音消失」(「テレビジョン」が「テレビ」になったりする場合)。
  • 言葉の中間の部分を省略するのは「語中音消失」(「キモチわるい」が「キモい」になったりする場合)。
があります。そちらもご参照ください。

このように、「短縮語」には「語頭音消失」「語中音消失」「語尾音消失」の3つがあります。ですがその中で、一番よく使われるのは「語尾音消失」です。
なぜかというと、言葉はその最初の部分に、その言葉全体を連想させるような情報を多く持っているからです。


 【2.あえて「語尾音消失」を使うとき】

上に書いたように。ことばを短くするときには、「語尾音消失」になることがが多いのです。それも、圧倒的といっていいほどの割合で「語尾音消失」になります。

それは、逆にいうと。「語頭音消失」には、「語頭音消失」にしかないメリットがあるということです。つまり、「語尾音消失」を使いづらい理由があるということです。

ではその、「語尾音消失」を使いづらくなるような時とは何か。それは、「省略しようとしていることばが、あまり知られたくないもののようなばあい」です。

それは、広い意味での「隠語」を作ろうとしている、ともいうことができます。つまり、仲間うちだけにしか知られたくないような後ろめたい事情があるときとか。もしくは、もとのことばをダイレクトに使うとタブーになるときとか。あるいは、友だち関係などの集団どうしの結びつきを強めたいときとか。そういった、みんな誰しもに直接に知られると困るようなことばを短縮したいとき、「語頭音消失」になりやすいのです。

例文に出てきた、「警察→サツ」という「語頭音消失」のばあいも。そういった、広い意味での「隠語」といえます。まあ、「サツ」ということばは今や一般的になりすぎているので、あまり効果は期待できそうにありませんが。


 【3.「語尾音消失」の長さ】

なお、ふつう。
ことばが省略されると、2音節から4音節くらいの長さにまとまります。ここでいう「音節」というのは、「ひらがな」「カタカナ」にしたばあいの文字の数と同じようなものだと考えてください(――厳密には違うけど)。

ですので、「2音節から4音節くらいの長さにまとまる」といったばあい。おおざっぱにいえば、「省略することによって作られたことばを「ひらがな」「カタカナ」で数えると、2つ~4つくらいになる」という意味になります(――もう一度書くけれど厳密には違う)。

それはなぜかというと。
省略したのにもかかわらず、まだこれ以上長いことばだとしたら。それでは省略した意味が、ほとんどなくなってしまいます。つまり「長すぎると、使いづらいまま」なのです。

だけど、もしもこれ以上短く省略してしまったとしたら。もはや何を言いたいのかが、分からなくなってしまいます。ようするに、「短すぎると、ことばとして伝わらない」のです。

だから、ふつう省略した言葉は2音節~4音節にまとまります。それはつまり、誤解をおそれずに書けば「ひらがな・カタカナの2文字~4文字に落ち着く」といったようなことです(――もう3回目になるので、さすがにクドいのでやめる)。
関連項目→省略法語尾音消失語中音消失連辞省略要語省略主辞内顕新造語法短縮語隠語
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