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頓絶法 とんぜつほう aposiopesis
――『女子妄想症候群(フェロモマニアシンドローム)』2巻112ページ(イチハ/白泉社 花とゆめCOMICS)
店長 後はユナちゃん
面倒見てあげてね♡」


ドゴン)
↑なにかが、目から発射される音
耐えろ…
耐えるんだ 滸)
炯至 あっ
ほとり♡」
わぁ このケーキ
なんておいしそう
今スグ食べたい
むさぼり食いたい
捕まっても食べたい
舐める様にして食べたい
食べ食べ食食食食食
食食食食食食食食食
友だち達 MAX耐えてる!!)
――『女子妄想症候群(フェロモマニアシンドローム)』
2巻112ページ
(イチハ/白泉社 花とゆめCOMICS)

 《定義》

頓絶法は、言いかけてやめるレトリックです。ダッシュ(――)やリーダー(……)などによって省略を表示し、そのまま言いさしの形で文を結ぶ表現法です。それでいて、省略された部分はしっかりと何だか分かる仕組みになっています。暗黙のうちに、読み手・聞き手には内容が伝わることになります。

「ためらい」「怒り」「気持ちの高ぶり」などによって、その人が言葉を続けられなくなった。と、そういったことを表現するという効果があります。

「ふき出し」では、わりと多く見かけるレトリックです。というのは、この「頓絶法」というレトリックは、「話のやりとり」つまり「会話」のなかで登場するものだからです。会話文がメインとなる「ふき出し」では、たくさん出てくるのが自然です。

この「頓絶法」は、まれに「黙絶法」とも呼ばれます。



 《例文を見る》

引用は、『女子妄想症候群(フェロモマニアシンドローム)』 2巻から。

主人公は「滸(ほとり)」(♀)。そして、その彼氏が「炯至(けいし)」(♂)。

この2人は、幼なじみだった。そして今、つきあっている。だけれども、この「滸(ほとり)」と「炯至(けいし)」のカップルには、とても大事な問題がある。それは、なにかというと。
  1. 「滸(ほとり)」と「炯至(けいし)」は、子供の頃から友だちだった。
    そして子供のころは、「滸(ほとり)」のほうが「炯至(けいし)」よりも、
    断然、強かった。

  2. そのため、「滸(ほとり)」と「炯至(けいし)」の2人の関係は、
    「兄」と「弟」のようなものになってしまった。

  3. こんな流れで「炯至(けいし)」は、犯罪的にカワイク成長した。

  4. 逆に「滸(ほとり)」は、
    犯罪的にカワイイ「炯至(けいし)」と長年いっしょに過ごしてきたために、
       異様に色欲の強い
       女に成り果てていた (19ページ)
という状態に、なってしまったからです。

で、この場面は。
友だちの「ユナ」が、バイトしている店(喫茶店)。この店が、クリスマスで人手不足になってしまった。そこで、ユナが(しぶしぶ)喫茶店に行く。

ならば、ユナだけがバイトに行ったのかというと、そうでありません。ユナは、その電話を受けた時、まさにクリスマスパーティーを始めようとしていたところだったのです。

そういった流れで。喫茶店でのバイトは、友だちみんなで行くことにした。なので「ユナ」はもちろんのこと、友だちの「滸(ほとり)」や、滸の彼氏「炯至(けいし)」も、バイト先へ行った。

バイト先の喫茶店に着く。そして、店の前でチラシを配ることになる。チラシを配る担当のヒトは、サンタクロースっぽい服装(=コスプレ?)を着ることになる。

問題は。
  1. サンタクロースっぽい服装(=コスプレ?)は、女のコ用しかなかった。

  2. しかたなく(?)、そのサンタクロースっぽい服装(=コスプレ?)を「炯至(けいし)」が着る。
といったところです。

着替えを終えて、そのサンタクロースっぽい服装(=コスプレ?)をした「炯至(けいし)」のすがた。それがまた、悶絶するようなカワイイものだった。

その〈異様に色欲の強い女に成り果てていた〉滸(ほとり)が、「炯至(けいし)」のカワイイすがたを見る。すると、そのカワイさによって、「滸(ほとり)」は制御不能となる。
ただ、
わぁ このケーキ
なんておいしそう
今スグ食べたい
むさぼり食いたい
捕まっても食べたい
舐める様にして食べたい
食べ食べ食食食食食
食食食食食食食食食
と。

ここで「食べ食べ食食食食食 食食食食食食食食食」と、ことばに詰まっているところ。これが、「頓絶法」となるわけです。「食べ」だとか「」とかいったものは、文が完全には成りたっていません。つまり、1つの独立した文とはなっていません。ですので、この部分を「頓絶法」とします。

なお、当然ながら。
「滸(ほとり)」が「今スグ食べたい」モノ。「むさぼり食いたい」モノ。「捕まっても食べたい」モノ。「舐める様にして食べたい」モノ。ここで「食べたい」ものは、本当は「ケーキ」ではありません。

ふつうケーキは「舐める様にして」食べるものではありません。また、食べたからといって「捕まる」こともないと思います(いちおう窃盗罪だけど、そんなことでいちいち逮捕はしない)。



 《レトリックを深く知る》

――『ミントな僕ら』1巻89ページ(吉住渉/集英社 りぼんマスコットコミックス)
きのう あのあと
牧村が帰ってきたのは
12時すぎだった

あのおっさんと ずっと
いっしょにいたのかな
いったい あれ 誰なんだろ

父親か親せき…?
って感じじゃ なかったよな
肉親にしちゃ
うちとけかたが
足りないっつーか
おっさん 妙にうれしそーだったし
なんか照れてたし

だいいち 親とかなら
寮の門限
破らせたりしねーよな
やっぱ どー考えても援助…
――『ミントな僕ら』1巻89ページ
(吉住渉/集英社 りぼんマスコットコミックス)

 【1.「頓絶法」のかたち】

「頓絶法」は、わりといろいろな効果のあります。たとえば、
  • 「感極まってことばも出ない」

  • 「二の句が継げない」

  • 「呆れて声も出ない」
と、いろいろ考えることができます。そのようなことをふまえて、右の引用を見てみることにします。

右の画像は、『ミントな僕ら』1巻から。

主人公は「のえる」。

その「のえる」が町を歩いていると、偶然、寮の同室生である牧村を見つける。しかし牧村は、「へんなおっさん」と一緒に歩いていた。そのことについて考えをめぐらせているのが、引用のシーンです。
援助…
と言いかけて、あ、まあ、この場合は「考えかけて」になるのかな、要するに「援助…」の部分で考えをやめてしまっています。
しかし、この考えかけでやめた言葉は、どう考えても
援助交際
です。それは、誰にでもわかる仕掛けになっています。

このように、
  • 考えかけて、途中でやめる

  • 言いかけて、途中でやめる
というのも、「頓絶法」によって表現することができます。


 【2.ちょっとイレギュラーな「頓絶法」】

うえで引用した「援助…」のように。
文の終わりを「……」だとか、「――」だとかいったもので締めくくる。このようなものは、正統派のパターンにあたります。このようなスタンダードなものもありますが、ちょっと変わったタイプの「頓絶法」もあります。
それは、
  • ふき出しの中身が「……。」だけしかない、というパターン。

  • 「……。」と沈黙を示して、そのまんま作品までもが終わってしまうパターン。(「沈黙表示」と重なる面がある)

など、ふき出しでは多彩な「頓絶法」が見られます。先ほども書いたとおり、「会話文が主体となっている」という性質によるものだと思われます。


 【3.「頓絶法」という用語】

なお。
このページで扱っているレトリックについては、「黙説法」と呼ぶのが一般的です。ダッシュ(――)やリーダー(……)によって絶句したことが表現されているばあいには、ふつう「黙説法」といいます。

けれども、このサイトでは「頓絶法」というレトリック用語を使っておきます。そして、「黙説法」という名前については別の意味を当てておきます。

あまり一般的なレトリック用語の使いかたではありません。ですが、そのように扱っていくことにします。


 【4.ほかのレトリックとの関係】

「……」と黙ってしまう「頓絶法」や「中断法」と、語句を並べることになる「疑惑法」。見た目には逆なのにも関わらず、意外にも近い関係にあります。

なぜならどれも、「言葉に迷っている」という点で共通しているからです。つまり、伝えたいことを、うまく言葉することができない時の「苦しまぎれ」である点が共通しているのです。


 【5.「頓絶法」の特別な効果】

時には。

「頓絶法」が、ちょっと違った効果を出すこともあります。それは、「読み手に伝えようとしかけてやめる」場合です。ふつうの「頓絶法」は、ことばの上では表現していなくても、読み手には内容が伝わります。ですが、そうではない「頓絶法」もあります。

この場合には、書き手は頓絶してしまった後で何を言いたかったのか、それが「読み手」に十分に伝わらないことになります。つまり、読者を「宙ぶらりん」の状態にする。もう少しいうと、「宙ぶらりん」にするためにワザと「頓絶法」を使うことがあるのです。

――「頓絶法」は、こんなときにも利用されることがあります。
関連項目→省略法、断絶法、中断法黙説法疑惑法挿入法
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