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稀薄法 きはくほう ――
――『なんて素敵にジャパネスク』1巻22ページ(山内直美・氷室冴子/白泉社 花とゆめCOMICS) 1年ぶりに吉野君に会いに行けば
なんと その前日に
流行病であっさり昇天したという
(がーん)

そのショックもさめやらぬ2月後
(えーんえーん吉野くん)

お祖母さままで
身罷られてしまったのよ
(えーんえーんおばーさまー)

そして泣く泣く都に帰ってきた
あたしを待っていたものは…

父「新しい母上だよ 瑠璃」
義母「よろしくね 瑠璃さん」
(どん!)

か…母さまが亡くなって
1年も経ってないのに!?

ああ 人間て何てムナシイ…!!
――『なんて素敵にジャパネスク』1巻22ページ
(山内直美・氷室冴子/白泉社 花とゆめCOMICS)

 《定義》

稀薄法は、表現をぼやかす技法の一種です。
そのままだと表現がどぎつくなったり、生々しくなったりするばあい。古語や外国語などに表現をかわすことによって、ことばを淡くする技法です。

婉曲語法」の代表的なものになります。



 《例文を見る》

引用は『なんて素敵にジャパネスク』1巻から。

上で強調した「昇天した」「身罷られてしまった」「亡くなって」というのは、ダイレクトに書けば「死ぬ」ということです。しかし、それでは物騒だし縁起も悪いし体裁も悪いので、もっとやわらかな表現にあらてめているわけです。

この「稀薄法」の対象となるものには、こういった生老病死のほかに、性や排泄にかんするものがあります。



 《レトリックを深く知る》


 【1.「善玉タイプ」と「悪玉タイプ」】

『認識のレトリック』(瀬戸賢一/海鳴社)では、「善玉」と「悪玉」との、2つのタイプがあるとしています。同書の中では、この2つのタイプ分けを「婉曲語法」の解説のなかで述べています。ですが、このサイトでは「稀薄法」に当たるレトリックなので、ここのページで紹介します。
善玉タイプ 「老夫婦」→「熟年カップル」
「癌」→「ポリープ」
「トイレ」→「化粧室」
「死亡保険」→「生命保険」
「後進国」→「発展途上国」
「肥満サイズ」→「ゆったりサイズ」
悪玉タイプ 「賄賂」→「政治資金」
「買収」→「接待」
「物見遊山」→「視察」
「退却」→「転進」
「売春」→「援助交際」

このように、「稀薄法」にも、「よい場合」と「わるい場合」との2タイプがあるとみていいでしょう。

もっとも。
何を「よい場合」を分けて、何を「わるい場合」に分けるのか。それは一見すると、かんたんなことに思える。でもよく考えると、とっても難しいことだということに気づく。

まあ、上にあげた「悪玉タイプ」のうち、「賄賂」と「買収」と「売春」は犯罪だから、まあ「わるい場合」といっていいかもしれない。

でも、「物見遊山」のことを「視察」と言っては「わるい」をいう判断をするためには、公務員の職業観だとか倫理観だとかが前提になっている。

それに、「退却」のことを「転進」と言っては「わるい」という判断をするためには、情報の公開性だとかが前提となっている。太平洋戦争末期に軍部が使った「転進」のことを「わるい」と言いたいのだったら、ここでは書ききれないほどの甲論乙駁が必要になってくる。

だから、「わるい」のだから「わるい」のだ、なんて言って言い逃れることはできない。そんなことで、この「善玉」「悪玉」を分けることなんていうのは、とうていできない。


 【2.例文の「同語回避」】

なお、例文では「死ぬ」という意味のことばが続くことになります。ですので何も考えないで書くと、何度も「死ぬ」ということばが続いてしまう「体裁が悪い」文になってしまいます。

そのように全く同じ言葉が連続することを、あんまり良くないと考えて回避する。そのようなレトリックを、「同語回避」といいます。

くわしくは、「同語回避」のページを参照してください。
関連項目→婉曲語法迂言法代称・ケニング、遠曲語法、抑言法、転喩含意法、美化法
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