ステレオの産業史|ダイヤトーン
伝統という評価語を定着させたダイヤトーン・スピーカー。



DIATONE
三菱電機株式会社



1958(昭和33年)
2S-305 
2ウェイ 2ユニットモニタースピーカーシステム  
1958年:完成当時 ¥47,000(1台)
1962年:一般市販開始当時 ¥56,000(1台)

1984年:最終ロットモデル ¥350,000(1台)
日本だけではなく 
英国BBC放送やベルギー放送研究所でも
採用された局用モニターのルーツ。

 三菱電機がNHK技研と共同でスピーカーの開発に着手したのは戦後間もなくのことで、モニター用として最初にNHKに納入されたのが、16cmフルレンジの「P-62F」であった。この型番に聞き覚えがなくても、後の「P-610」といえば、自作派を自認するマニアで知らぬ人はいないであろう。
 その後三菱が、わが国初の無響室を完成するとモニターシステムの開発に取り組み、1955年(昭和30)に「2S-660」(下記写真)をNHKに納入した。すでに、このシステムで、音の放射で生じる伝播の乱れを、両サイドにテーパーをつけたバッフル効果で解決している。




 それから2年後の1957(昭和32)年に始まるのFM実験放送に備えて開発されたのが、栄光の型番「2S-305」である。
 開発過程で特に問題視されたのがネットワークによるユニット間の位相のズレ。当時から、音像定位の優劣が指摘されており、必然的にコーン型ユニットによる2ウェイ方式になった。
 クロスオーバーは1,500Hzで、ウーファーの高域は自然減衰、ツイーターのみにハイパスのコンデンサーを入れたシンプルな構成が採られたのも、ネットワークの弊害を極力無くすためであった。
 なお、 市販されたのは完成から4年後の1962年。1台56,000円はかなりの高額であったが、 NHKクラシック番組の解説者やレーコード月評の音楽評論家諸氏が、真っ先に購入している。
再生周波数帯域:50〜15,000Hz クロスオーバー周波数:1,500Hz
外形寸法:W650×H880×D445mm 重量:50kg 

2S-305に使用されたユニット。
PW-125 
30cmウーファー¥20,400(発売当時)
 エッジの材質とコーンのコルゲーショーンを「P-610」と比較して見ると、似ていることが分かる。

TW-25
 
5cmコーンツイーター
¥10,500(発売当時)

 一見、何の変哲もないコ
ーン型ツイーターではあるが、磁気にパーメンジュール(鉄とコバルトの合金)を使用し、極めて強力な磁力を得ている。




1960(昭和35年)
P-610A 
16cmフルレンジスピーカーユニット¥1,700(発売当時)
高域のレスポンス不足が不満にならない素性の良さ。6半ユニットの名作。
 1947年(昭和220、初めてBTS規格のモニターユニットとして完成された「P-62F」から数えて3代目に当たる。そして「P-610A」ほど、長きにわたって支持され愛されたユニットはないであろう。その評価を裏付けるのは、なんといっても音質鑑賞用としての素性の良さであった。なお「P-610A」には、JIS規格(¥1,500)とBTS規格(¥1,700)があり、BTS規格には実測の周波数特性データが添付されていた。
 いずれにしても自作派にとっては、シングル駆動でもダブル駆動でもよし。そして、スコーカーにも使えることが、使い手の創意に応えてくれる。これが何よりの魅力であった。また、ステレオがブームの兆しを見せ始めた60年代後半になると、他社製のセパレートステレオを始め、スピーカーシステムの多くにも採用された。
再生周波数帯域:fo〜13,000Hz *fo:80Hz インピーダンス:8/16Ω 出力音圧レベル:92dB 重量:0.92kg


1977(昭和52年
Monitor-3(AS-30002P) 
ドライブアンプ搭載型
2ウェイ 2ユニットモニタースピーカーシステム
¥960,000(移動用キャスタースタンド付)
ドライブアンプ搭載。「2S-305」系、最後のモデル。
 「2S-305」に半導体のドライブアンプが搭載されたのは、1965年(昭和40)の「AS-3001」が最初である。「2S-305」がNHKに導入された頃のドライブアンプは勿論真空管式で、出力も15W(それでも当時としては大出力)足らずであった。それが、FMのステレオ放送が本格化してくると、ライブ録音のモニタリングには適さなくなり、ユニットの対入力を高め、電送特性を重視してアンプ搭載のモデルを誕生させたわけである。「Monitor-3」は、その4代目にあたり「2S-305」系の最後のモデルになった。
 使用にあたっては、付属のスタンドを使用し、最適な聴取位置は3〜5mで、壁から40cm以上離すことが望ましい。
なお、下記の写真が搭載されたモノラルパワーアンプで、一般的なプリでも使用できるようにインピーダンスコンバータ
ーDZ-50(¥40,000)が用意されていた。
スピーカーシステム部
使用ユニット:30cmウーファーPW-25A、5cmコーンツイーターTW-25A 再生周波数帯域:50〜15,000Hz 
クロスオーバー周波数:1,500Hz 外形寸法9本体):W650×H963×D445mm 重量:63.5kg 


アンプ部
定格出力:100W 
入力インピーダンス:600Ω、10kΩ平衡63dB
伝送周波数帯域:20-50,000Hz
消費電力:70W





1989(平成元年

2S-3003 
2ウェイ 2ユニットモニタースピーカーシステム  
受注生産品 ¥1,500,000(税別1台)

音楽鑑賞用としても極めて優れた音。
 この10年ほどで、モニーターシステムの流れに大きな変化が生じた。その流れをつくったのは、言うまでもなくJBLである。
これまで、モニターシステムの定番といえば、2ウェイが常道であった。それを、8000Hz前後から上にトゥイーターを加えてモニターの広帯域化をはかり、それを主流の座に押し上げてきた実力からである。
 デジタル録音による高音質化が急速に進む時代にあって、それは当然のこととして受け入れられた。
 そうした中で、2ウェイの基本を変えずに大躍進を試みたのが「2S-3003」である。ウーファーもツイーターも先端素材で固められ、それから再生される音は実に正確で、音楽鑑賞用としても極めて優れる。それにしても、1台150万(税別)という価格を考えると、他に魅力的な選択肢があるという現実も見逃せなかせないのである。
使用ユニット:32cmウーファー、5cmコーンツイーター
再生周波数帯域:39~30,000Hz
クロスオーバー周波数:2,400Hz
外形寸法:W510×H840×D490mm

重量:54kg



1997(平成9年)
P-610MA 
16cmフルレンジスピーカーユニット ¥10,000(税別)
スペックアップで甦った
伝統のロングランモデル。

 エッジがポリエチレンのロールエッジに変わり、センターにチタン箔のダイアフラムを配して広帯域化をはかるなど、物理特性の改善が音の表情にも良く現れていた。限定ロットで生産を打ち切ってしまったが、また、いつの日か、復活することを望みたい。
再生周波数帯域:fo〜20,000Hz *fo:70Hz
インピーダンス:8Ω 
出力音圧レベル:92dB

重量:0.92kg



ダイヤトーン雑感
 三菱といえば、今やロケット、国産初のジェット旅客機、さらに防衛装備の技術などで、世界の先端に手が届くほどになった巨大な複合企業体である。ちなみに、三菱財閥の初代総帥とえいば、坂本龍馬と同輩で、且つ土佐の下級郷士として浅からぬ縁のあった岩崎弥太郎である。
 さて、ダイヤトーンは、かつて日本のスピーカーを代表する名門ブランドとして名声を博した。それを世に出したのが、三菱財閥の一翼たる三菱電機である。その三菱電機がNHK技術研究所との共同開発で、モニター仕様のスピーカーユニット「P-62F」(P-610の原型)を登場させたのが1947年(昭和22)。すでに、この時から「ダイヤトーン」という名称が使われていた。これは、三菱のスリーダイヤのマークから考えついたものだと思うが、正式に三菱オーディオの総合ブランドとして使われたのは、1972年(昭和47)以降のことである。さらに、コンポーネントの分野にも進出し、数々の意欲作を送り出したが、やはり、本流はスピーカーづくりであったと思う。そして生まれた名作スピーカー・システムの数々が、ここに紹介したモニター系の音づくりを源流にしていたのではないだろうか。
 1987年(昭和62)には、業績不振の赤井電機を吸収合併し、A&Dのブランド名でハイエンド・アンプへの進出をはかったが3年で撤退。そして1999年(平成11)には、ダイヤトーン自身も52年の歴史に突然幕を降ろした。
 現在、三菱エンジニアリングが高級志向の富裕層を対象に「ダイヤトーン」ブランドを復活させ、3ウェイの大型フロアー型システムDS-MA1(1台¥1,000,000/税別)をネット直販で予約販売している。
http://diatone.mee.co.jp/index.html


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