「プリウスのブレーキ問題」

2010年2月8日

トヨタ自動車がこのところ苦境に立たされている。アクセルペダルの不具合と看板商品「プリウス」のブレーキに関するクレームが無視できなくなってきたことなどである。

数万点に及ぶパーツの組み合わせである自動車は、どうしても機械的な不具合が出てきてしまうし、現在の車はコンピューター制御がメインになっているので、そのソフトの不具合が発生する頻度も大きい。(車に限らず家電製品でも同じことが言える。)どんなにテストコースで試験しても、実際に使われるさまざまな状況下での不具合を事前に知ることなどできないであろうことは容易に想像できる。

しかし「プリウス」について報道されていることは、どうも違うのではないかという印象を持っている。すなわち、ハイブリッド車は「従来の車とは違うもの」という視点が欠落しているような気がしてならない。プリウスのブレーキは、「回生ブレーキ」と「摩擦ブレーキ」を併用し、それらを状況に応じてコンピューターで制御しているということである。

回生ブレーキの技術は新しいものではなく、鉄道では早くから使われているようで、駆動力を生みだすモーターを発電機として使用し、その時の負荷をブレーキとして利用するものである。丁度、自転車の発電機(ダイナモ)を車輪に接触させると自転車が急に重くなるように。ハイブリッド車であるプリウスは、ガソリンエンジンと電気モーターの併用で動かすシステムであるから、電気モーターのための電気は「ニッケル水素電池」に蓄えられている。電力を使用すれば蓄えられた電気が減るので、回生ブレーキによって発生した電気を、キャパシタを介して電池に充電されるというシステムとなっている。

ここからがややこしいことなのだが、電池がフル充電(あるいは規定の充電量)にある場合は、(電池側の保護のために)回生ブレーキは使用されない事になっていて、また滑りやすい道路ではブレーキがロックしないように(ABSが働くようにするために)、回生ブレーキが利かない様な仕組みになっているようで、そのシステムの切り替えのための時間差が、「ブレーキが利かない不都合」と感じられるようである。

私の使っている車のトランスミッションは「CVT」である。使い始めた頃は、オートマチック車と違って停車に至る過程で、車が自動でブレーキがかかるような、エンジンブレーキがかかったような感覚を持ったが、今では慣れてしまい「この車はこんな風に止まるのだ」と思えるようになってきた。「CVT」は、スクーターなどに使われている「プーリー」と同じ原理のもので、スクーターに乗っていると、停車する寸前に同じようなブレーキする感覚を持つ。だからと言ってこのことが不具合ではない。その機械が持つ特性なのである。

新しい技術は、従来機械とは違った使い手側の意識のチェンジが必要であるし、メーカーもその違いを丁寧に教えるべきである。ハイブリッドにしても、その次に登場する電気自動車でも、回生ブレーキは必須の装置であるはずだ。皆でこの技術を理解し、育てていくことが「未来」を語ることにつながる。

「事故が起きた」「客からのクレームが多い」、だから「プリウスは欠陥だ」と言わんばかりの報道には首を傾けるのである。ましてや、フォードやGMのネガティブキャンペーンに相乗りするような愚は許されない。

トヨタでは、この「時間差」をソフトで修正することになったようである。トヨタやホンダは、ハイブリッド車の特性(いいことばかりの宣伝ではなく)や、その使い方について丁寧に説明すべきと思う。何しろ世界に先駆けている技術なのだから。

しかし、トヨタの開発担当重役が記者会見した折に、「素人的には・・・・」と発言したのには驚いた。「素人にはわからないだろうが、技術屋にはわかっている」的な傲慢さが出てしまっていた。技術というのは「素人が使ってくれてなんぼ」のものである。「そんなに技術屋は偉いの?」「そんなにトヨタは偉いの?」と、トヨタの一株主は疑問に思うのです。