7時に起きてダイニングルームに行き,パンを焼きコーヒーを入れて朝食を食べる。8時半,Kさんと共に宿の支払いを済ませてバスターミナルへ歩く。大邱行きのバスは多く,切符を買うと9時発のバスだった。高速道路に乗り,Kさんと話しているうちに田んぼの向こうに高層マンションが現れ,1時間で東大邱駅近くのバスターミナルに着いた。
バスターミナルを出たところで,Kさんがバスに帽子を忘れたことに気付いた。Kさんはあちこちで尋ねていたが,そのうちに職員らも動き出し,車庫に回送されたバスの車内で見つかったようだった。若い職員が車を出して,少し離れた車庫まで乗せて行ってくれた。帽子が無事にKさんの手に戻ると,そのまま地下鉄の駅まで送ってくれ,海印寺への行き方を教えてくれる。こういうところ,この地の人はとことん親切である。
トークンを買って地下鉄に乗る。大邱の地下鉄といえば,多くの人が亡くなった火災を思い出す。シート等に難燃性の素材を使っていなかったことが問題視されていたが,その後改善されたのか硬いシートだ。Kさんが車内の路線図を見ながら降りる駅を探している。いつの間にか近くにいたおじさん3人も加わって一緒に探していた。
どこかに荷物を預けたいが,地下鉄駅のロッカーはAPECほにゃららと書いた貼り紙があって使用禁止だ。地上に出て海印寺行きのバスが出る西部バスターミナルに行くと,ここのロッカーは大丈夫だった。バスターミナルに着いたのが11時で,10分後にバスがあった。ヘインサ〜と呼び込んでいる。

慶州の宿の中庭

大邱のバスターミナル

大邱地下鉄のトークン
大邱市内を抜け30分ほど走って高速に乗った。日が差し込んできて暑い。両側に低い山並みが続く。常緑樹はマツだけで,山全体が靄でもかかったように白っぽく見える。高速道路を下りると高霊の町に停車した。家並みの背後に古墳が見えていた。ここから先は一般道を次第に山の中に入ってゆく。最後はカーブの連続する坂を登って海印寺の駐車場に到着した。大邱から1時間半。
駐車場から渓流に沿う道を上った先に旅館&食堂街がある。ここで昼食にする。昼食はKさんが奢ってくれた。渓流沿いの道を今度は下って,先ほどの駐車場を通り過ぎると海印寺へ向かう坂道があった。右手に大きな土産物屋ビルを見て樹林の中に入って行くと,水量のある谷川に沿って参道が通じている。山歩きの格好をした人たちとすれ違う。韓国の仏教寺院が山の中にあるのは,李朝時代に仏教が弾圧されたからだそうだが,今となってはお手軽に俗界を離れられる行楽地になっているようだ。
谷川沿いの道を1kmほど歩くと右手に小さな山門が見えた。この門を潜り,更にふたつの門を潜って敷石の参道を登りつめると,大きな建物のある広場に出た。正面と左右にある建物はいずれも新しく,催し物の宣伝をする垂れ幕が下がっている。この広場から石段を登るとまた広場があり,更に急な石段を上った所が本殿だった。
海印寺の名を高らしめているのは八萬大蔵経という13世紀に作られたお経の版木である。世界遺産に指定されているのも,この版木とそれを収めた大蔵経板殿という建物であって海印寺そのものではない。これを見なければ海印寺に来た意味がない。

参道に沿って流れる谷川

海印寺の山門

扉を閉ざした大蔵経板殿
本殿の裏にまわると,一段高い所に塀をめぐらせた建物があり,石段が通じている。石段の上に「経蔵大萬八」と扁額を掲げた門があるが,下から見ると門が閉まっているようだ。ふと石段の脇にある立て札を見ると,今日は休館イムニダと書いてあった。海印寺に来た意味がなかった。ここまで来るのに拝観料を払わなかったのが不思議だったのだが,これで謎が解けた。遣らずぶったくりでないのは良心的と言えよう。
仕方がないので,周囲のお堂を覗き,大きなモミの老木を見て30分弱の滞在で寺を後にした。大きな岩の間を流れる水音を聞きながら,マツやクヌギの林の中の道を下る。ハイカーが多いのも頷ける環境だが,ハイカーが多いのは今日は拝観料が要らないからかも。20分ほど歩いてバス乗り場に着くと15分後にバスがあった。
帰りのバスではほとんど眠っていた。1時間40分かかって4時半頃大邱に戻った。地下鉄に乗って東大邱まで移動し,新しく大きな鉄道駅にある観光案内所に行く。明日訪れる予定の友鹿洞への行き方等について尋ねる。最初はKさんが韓国語で訊いていたが,そのうち日本語を話す人が出てきて応対してくれた。
駅を出るとちょうど日が沈むところだった。駅前にある旅館街に向かったが,高そうなモーテルが多いので敬遠して歩くうちに旅館街を外れてしまった。Kさんが通りかかった女性に尋ねると,彼女が近くの旅館まで案内してくれた。
6時にKさんと待ち合わせて食事に行く。宿の近くにいくつかある食堂のうち,新しく小洒落た造りの参鶏湯屋に入る。Kさんは参鶏湯がお気に入りなのだそうだ。量の多い参鶏湯を平らげ,焼酎を飲みながら8時半頃まで話した。

休館を伝える看板

新しい東大邱駅の駅舎

夕食には参鶏湯