オールディーズ

 踊る熊とどんちゃん騒ぎしてたんです。それでぼくらは幸せだったんです。
 鮮やかな赤と緑の胴の小太鼓です。熊はそいつをタララッタ、タララッタと、二本のスティックを軽快にロールさせながら鳴らして、全身でスイングするんです。その頃ぼくはニューオーリンズなんて知らなかったけど、それが賑やかに死者を送る音楽だってことはわかりました。悲しすぎてぼくらはひどく陽気でした。ピアノを弾く指は面白いくらい回り、夜が更けるのも忘れてぼくらは騒ぎ続けました。

 鮮やかな緑の野原のまんなかに、色の剥げかかった小太鼓は今も転がっています。時々驚いたように小さく跳ねると、その上で二本のスティックが一瞬タララッと踊ります。それだけです。野原には心地よい風が吹いて、誰もいません。ぼくはこんなふうにしんみりするのは苦手です。スイングすれば。そう、スイングすればいいじゃない。ぼくは左右に体を揺らしてあのおどけた踊り真似ながら、なつかしい歌を口ずさみます。野原には誰もいません。


書き下ろし





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