沢  由紀子/ ピアノ・リサイタル・レポート

レオシュ・ヤナーチェク生誕150周年記 念オール・ヤナーチェク・プログラム

「レオシュ・ヤナーチェク / ピアノ音楽の世界」ヤ ナーチェク ピアノ曲集

Last Update 2004.12.11






コンサートチラシPDF (1.2M)
コンサートプログラムPDF (1.3M)

(デザイン:アプローズ453 田村敏久)


2004 年10月29日(金) 午後7時開演  トッパンホール

主催:日本ヤナーチェク友の会
後援:日本マルチヌー協会日本チェコ協会/日本スロバキア協会
        駐日チェコ共和国大使館


《プログラム》
 草かげの小路 第T集 全10曲
  1 我らのゆうべ
  2 散り行く落ち葉
  3 一緒においで!
  4 フリーデクの聖母マリア
  5 女達はつばめのようにしゃべりたてた
  6 言葉もなく!
  7 おやすみ!
  8 こんなにひどくおびえて
  9 涙のなかで
  10 ふくろうは飛び去らなかった   

 草かげの小径 第T集 補遺  
  ピュ−モッソ・アレグロ   

 草かげの小径 第U集  
  アンダンテ・アレグレット・ヴィヴォ   

 ピアノソナタ1905年10月1日 街路にて  
 
 霧の中で 
  1 アンダンテ
  2 モルト・アダージョ
  3 アンダンティーノ
  4 プレスト   

 「ないしょのスケッチ」より  
  儚き運命 ・ 君を待つ(日本初演)



沢 由紀子
 武蔵野音楽大学卒業。藤井ゆり、宮澤晴子の各氏に師事。旧チェコスロヴァキア政府給費留学生として国立プラハ芸術アカデミーに留学、故ヨゼフ・パーレ ニーチェクに師事('88-90)。プラハ、ピルゼン、東京にてリサイタル('90)。1995年よりほぼ毎年チェコ国内の各地において演奏活動を行う。 プラハ、アトリウムホール、フラホルホールにて日チェコ友好コンサート('95)。モラヴィアの古都、クロムニェジーシュの音楽の夏コンサートシリーズに てリサイタル('97)。98年秋にレオシュ・ヤナーチェ クピアノ作品集のCDをリリース。東京にて日本とチェコの友好コンサート('98,02)。ヴィ ソカーのドヴォジャーク記念館にてリサイタル('00)。 チェスキードゥプ、ノヴェー・ストラセツィーにてリサイタル('01)。イチーン・チェルヴェニーコステレツにてリサイタル('02)。

今年6月に立命館大学でチェコ音楽を演奏。また9月にはチェコのイチーン、オロモウツ、ブランディーサ・ナッド・ラベムにてリサイタル。
現在、聖徳大学講師。

 【演奏レビュー】
    寺西信隆  (ピアノ総合情報サイト ピティナよ り転載)
今年はチェコの作曲家レオシュ・ヤナーチェクの生誕150年にあたる。まだよく知られた作曲家とはいえない が、節目の年でもあり演奏を耳にする機会が多い。
 この日の演奏会は、オール・ヤナーチェク・プログラム。日本初演の「カミラのアルバム(ないしょのスケッチ)」からの2曲を含む、意欲的なプログラムで あった。
 ヤナーチェクの作品は同郷のスメタナやドヴォルザークと違い、相当に内省的で華やかさはほとんど感じられない。いってみれば仙人のような、どこか超然と したものが強く感じられる。もっとも本人はかなり激情的な性格だったようではあるが。
 演奏はチェコ音楽の名手・沢由紀子。「草かげの小径にて」は前半やや硬さが見られたものの、その表現は精緻。この日は第2集の第4・5曲を第1集の補遺 として順序を変えるという試みもなされた。作曲順としてはそのとおりになるが、各曲の独立性の強い曲集であるため違和感はない。むしろ作曲者の深いため息 のようなものが感じられ、
 ピアノ・ソナタ「1905年10月1日、街頭にて」。労働者ソナタともいわれるこの曲は、作曲家の憤激と絶望が、2オクターブのユニゾンの多用で表現さ れている。すなわち作曲者は空ろな響きのユニゾンで「虚無感」を書いた。
 虚無や諦め、絶望は本来空ろなものだと思う。ソナタでは数回激情的な場面がでてくるが、どこか諦めのようなものが感じられてならない。あえて響きに表情 を持たせていないのではないかとも思う。その和音はしばしば空っぽな世界を表現する。
 晩年まで報われることのなかった表現者ヤナーチェク。ピアノ作品は彼の歩んできた道、あるいは愚痴であり時には憤激、そのようなものが詰め込まれている ひとつの自伝だ。
 それを作曲者への畏敬の念と誠実さをもって演奏する沢。作品にどんなに虚無感が横溢しようとも、ストイックな誠実さで応える。にもかかわらず、余計な装 飾を取り払った仙人の音楽には苦しさはなかった。
 最後に2曲が演奏された「カミラのアルバム(ないしょのスケッチ)」は優しく暖かく、ものすごく人間的な感情があふれており、ほかのピアノ曲とは違った 味を出す小品集で、この2曲をプログラムの最後に持ってきた沢のセンスと同じく、優しく光っていた。(文中敬称略)

【寺西信隆氏のプロフィール】
1973年生まれ。早大法卒。2000年10月より(有)アトリエ・デ・くっきいずの機関紙「EMOTION」に音楽エッセイ「CD誤選!」を連載中。

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