視点を全方向の客席に動かし、ステージからの視点を加えることで、このプロジェクトの斬新さ、壮大さが余すところなく表現されている。
この躍動感、浮遊感は、従来のステージでは決して表現され得なかった。そして、今後も、これと同じステージはもう二度とないだろう。
ライブ映像の最高傑作と言っても決して過言ではないと思う。当日の感動を越えるライブ盤というものに、初めて出会った。
同じ音源を使っているはずなのに、全然違う旋律、全然違う音楽になっていて、不思議かつおもしろい。
こういう実験的なことをやっていくときには、これからも伍佰の台湾語読み「GO PA」(go partyとかけているとのこと)の名前を使って作品を出していくらしい。
個人的には、とにかく、こんなに素敵なアルバムを作ってくれて、本当にありがとう、と言いたい。
今までも台湾語の曲やアルバムはあったけれど、伍佰さんが台湾そのもの、台湾人そのもの、台湾に生きることそのものを歌ったのは、初めてではないだろうか。
形式的には、「舞曲搖滾」ということで、電子音楽の要素を多用しつつも、濃厚なロック性と台湾色。
アレンジも詞も非常に良くできていて(と台湾語がわからない人間が言うのも変だけれど)、こういうものをほとんど1人であっという間に作ってしまう伍佰さんという人は、本当にとてつもなくすごい人であることを、改めて知らされた。
台湾について、台湾人について、台湾語について、台湾語の歌について、そして伍佰さんという人についても、今までとは全く違うヴィジョンを与えてくれるアルバム。
映像だけでなくCDもついているのが嬉しい。
愛にあふれた、実にかけがえのない素晴らしいライブ。
新曲も4曲、また当日のライブの他にも、紀録片や海外でライブを行った時の映像も入っている。
最初聴いたときには、音も歌い方もすごく変わったのでびっくりしたけれど、今まで背負ってきた“らしさ”を捨てた、ストレートで等身大の伍佰さんがここにいる、という気がする。
映像は、台北会場のものが中心。
2枚組、26曲収録。
かつて、これほど平易な言葉で、ストレートに伍佰さんが語りかけてきたことがあっただろうか?!
このアルバムは、伍佰さんが自分の心に従って、本当に作りたいものを作ったという気がする。
最初に迫ってくるのは、そこはかとない悲しみ、しかし、その向こうには、「人生を祝福せよ!」という力強いメッセージが聴こえてくる。
そして、それを受け止めて、自分の人生を祝福できるかは、聴き手のひとりひとりにゆだねられているのだ。
インタビューは、伍佰本人がかなりまとまったことを語っている貴重な映像。
カラオケでは、最後の「親愛的,イ尓喝醉了」は抱腹絶倒。(まあ、上には上があるけれど・・・)
タイトル曲の「白鴿」、「與女尓到永久」、「一生最愛的人」などは、もう完全に恋愛を超越した内容。彼の人間的成熟を感じる。
ボーナスCDの「美麗新世界」は、大陸の映画(同名、1998年)の主題歌で、伍佰自身もこの映画に出演している。
台湾各地の酒造工場をコンサート会場にし、仮設の会場で全員スタンディングの数万人の聴衆が持つ蛍光棒の光の波が圧巻。
ツアー中のいろいろな映像も入っていて、台北で大雨にたたられ、コンサート中止が危ぶまれる中、スタッフが激しい雨と必死に戦う様子や雨が止むように神頼みしている映像なども。
これは台湾の音楽界や台湾の人たちにとっては、おそらく一種の事件だったと思う。
台湾語がわからないので、内容の理解という点ではおそらく1割を切っていると思うにも関わらず、その圧倒的な説得力と音楽の力強さに引き込まれ、揺さぶられ、感動してしまう。
「若い世代へメッセージを伝えるための媒体として北京語で歌を作ってきたが、だんだん表現が平凡に感じてきた。だから新しいアルバムでは母語である台湾語でいろいろ語りかけたかった」(ポップ・アジア No.17)と彼が言っている通り、内容的にもそれまでとは全然違う、台湾に生まれ、生きている彼の土着的な世界が色濃く歌われている気がする。
なお、このアルバムから、それまで本名の呉俊霖でクレジットされていた作詞、作曲もすべて伍佰でクレジットされるようになった。
CDは、人に提供した曲や映画音楽、1枚目のデビューアルバムの曲を中心にした選曲。
実は、このCDには「幻の15トラック」がある。
CD本体と歌詞カードには15トラック「暗淡的月」が書いてあるし、実際CDには15トラック目があるのだけれども何の音も出てこない。
伍佰七不思議のひとつである。
と思ったら、実は5分後に曲が始まった(笑)。
伍佰さんのジョークなのだろうか?
私と同じように何も入っていないと思った方は、5分がまんしてみましょう。
一方、VCDの方は29曲も入っていて(VHSは32曲)、ほとんどコンサートを丸ごと収録という徹底ぶり、ライブ盤としては決定版とも言えるかもしれない。
いきなりメロディックな曲から始まり度肝を抜かれるが、彼の繊細さが感じられる。
タイトル曲「愛情的盡頭」、「LAST DANCE」、「才那威的森林」など名曲多数。
すごくいい曲が多い名作なのは間違いないのだけれども、少々かっこよすぎ、洗練されすぎの気もしないでもなく、その辺が彼のいう「表現が平凡」(ポップ・アジア No.17)という感覚につながり、次作の台湾語アルバムにつながったのかな、という気もする。
オリジナルアルバムには入っていないが、ライブでは今でも必ず演奏する定番の曲が多数収録されている。
ただし、かなりディープに泥臭いので、上級者向け?
沢田研二の「時の過ぎ行くままに」のカヴァー曲「愛イ尓一萬年」も収録。