「真世界亜洲巡回演唱会」シンガポール公演
当日になり、開演時間が迫って、会場のシンガポール・インドアスタジアムに車が近づくにつれ、緊張の余りお腹は痛くなり、呼吸は乱れ、心臓は飛び出しそうになって、無口になった。
私の席は、アリーナ席だった。
日本円にして、約12,000円。今回のツアーの中でも、破格の値段である。
なぜシンガポールだけそんなに高いのかよくわからない。
やはり安い席から売れていき、それでも9割以上はチケットが捌けたと当日の新聞には出ていた。
それにしても、開演時間の8時になっても客席は埋らない。始まる気配もない。
ようやく客席が埋ったのはおよそ30分後だった。
そういうものなのだろうか、シンガポールでは?
いよいよ暗くなる。
それまで冷めた感じだった客席が、期待でざわめく。
スクリーンに提供各社の名前が「真世界」を歌う伍佰 & China Blueの映像と共に映し出されると、もう指笛の嵐。
そして、スモークを焚いたステージの後ろから、逆光に照らされながら伍佰 & China Blueの登場。
ゆっくりと歩いて下りてくる。
あまりにクールな登場に、私はいつしか「ごーばい!!」と叫んでいた・・・
「白鴿」が出てから今回のコンサートまで4ヵ月あったことは、私にとっては幸いだった。
たぶんもう100回ぐらいは聴き込んだだろうし、じっくりと全部の曲を訳し、その過程で自然に詞が自分の中に染み込んでしまっている。
そんな大好きな曲ばかりを、目の前で本人が歌ってくれる。しかも周りは同じ人が好きなファンばかりなのだ。
いつもはMDウォークマンでヘッドフォンで一人で聴いているだけなのに、今日は本人たちが大きなステージで大音響で大観衆の前で演奏してくれるのだ。
もう、こんなに嬉しいことはなかった。
こういう体験は絶対に日本にいては望むべくもない。
私は最初から最後までずっと立ちっぱなし、歌いっぱなし、踊りっぱなしだった。
周りのシンガポーリアンたちは結構途中で疲れて座っていたが、私は全く疲れることがなかった。
やっぱり、この瞬間のために日本からやって来れたという感激が、疲れを忘れさせたのだろう。
いや、そんなことより、彼等のステージが本当に素晴しかったからだった。
言葉にするととても陳腐になってしまう。
とにかく、すごいとしか言いようがない。
彼等の人間自体は、生で見るとなんだかものすごく地味なシブイ人達のように思えた。
派手なことは何一つやらない。
(たまにDinoがスティックを投げるぐらい(笑)。)
それなのに、音楽はものすごい牽引力でもってどんどん聴衆を引き込んでいくのだ。
見かけ倒しの昨今のバンドとは全く逆である。
本物だ。
ビデオでも感動したけれど、生はもう全く次元が違っていた。