精神科作業療法治療学(菊地)

【試験範囲】 山根 p36〜p54、p110〜p152、p156〜p190

       全書 p60〜p143

 

 

        作業療法の実践(山根p110〜)

 

        作業療法の流れ(山根p111図5−1−1参照)

  

 作業療法処方 → インテーク面接 → 試し参加 → データ収集・整理 →

 評価要約 → 焦点化 → 目標決定 → 作業療法計画 → 作業療法実施 →

 再評価 → 終了・中止・中断 → アフターフォロー

 

        評価とは(山根p119)

 対象:心身の機能障害やその結果としての生活活動の制限や社会参加の制約がある個人

 

 目的:「援助のための理解」を目的に行われる「質的評価」が主になる

    ⇒ 環境を含めたその人自身を理解し、特長を捉える 

 

        手段

 @ 情報収集:他部門から得られる情報(山根P121表6−2−2参照)

    一次データ;自分が直接対象者との面接や観察から得たもの

    二次データ;他からの情報

          (誰から何を何のために情報を得るのか明確にしておく)

  ※情報の裏にある本当の気持ち、裏に込められた“ニーズ”をOTは知る!

 

A        面接

 目的 

治療や援助関係の樹立

情報の入手などの評価

援助や相談を含んだ治療的関わり

  

  物理的要素 

環境;部屋の大きさ、窓、ドアなど

位置;対面、90度、横並びなど

形態;構成的面接、非構成的面接

 

 

 

種類

インテーク面接:作業療法開始にあたり行われる。

⇒ 第1印象、病状・障害の程度、COM状況、OT適否、OTオリエンテーシ 

      ョンなどを見る

情報収集面接:援助に必要な情報を得る。

⇒ 患者のそのときの状況に応じてフォーマル、インフォーマルを使い分ける

 

  留意点

事前の準備

  ⇒ 情報入手の同意を得る、目的を明確に伝える

基本的な留意点(山根p128参照)

“目は口ほどに物を言う”

  ⇒ 非言語的なサインに目を向ける(表情や動きなど) 

 

B        観察     

観察とは

  ⇒ 観察力を高めるためには利用できる感覚すべてを動員する

    ひとりの対象者を観察する場合、部分を観察し、“部分と部分”、“部分と

    全体”を観察し、さらに“全体から部分”を観察するなど多眼的な観察

    行う

    観察は観察者を媒介にして行われるため、観察者そのものの存在のあり

    方が対象の現象に反映される

 

観察の形態

  ⇒ 自然観察・実験観察

    直接観察・間接観察

    関与観察・非関与観察

 

        OTは観察するその場面で違和感なくその場に居られるように心がけること

  が大切である。自分から話し掛けたり、一緒に作業を行ったりしながら観察  

     を行う

 

非言語的なサインの観察

  ⇒ 外観、話し方、表情、姿勢、態度、行為、動作など

 

生活活動の観察(OTにとっては大事!)

  ⇒ 身辺処理、生活管理、家事行為、COM、対人関係、作業遂行、

    移動と社会資源利用

 

作業面接

  ⇒ 箱作り法(構成的作業)と投影的作業がある

 

 

        作業療法計画の立案(山根p143〜)

 

@      全体像の把握:様々な場面での観察、面接から得られた情報をまとめる

   ⇒ OTは患者のADL全体をみつめ、生活にアプローチしていく

 

A     問題点の抽出:何故それが問題になるのか、今後の生活も見据えて考える

 

B     利点:生活上の、作業療法を実施していく上での利点となる部分を挙げる

 

C     焦点化:作業療法で援助することが適切であると考えられる

    ⇒ OTがターゲットとしていく所はどこか、その根拠をもって進めていく

 

D     目標の設定(STGLTG

   ⇒ 対象者と共有でき、効果が確認できる現実的・具体的目標を設定する

 

E     計画の立案

   ⇒ 作業の選択とその理由

     作業活動選択の目的と手段

     自分自身がどう関わっていくのか

     どこで行うのか(場の利用)

     どんな環境で行うのか(集団)

     どれくらい行うのか(頻度・時間)

 

 

◎ 作業療法の意義・目標

 

@        症状の軽減・情動の安定

A        基本的諸機能の評価・改善

B        現実的生活の再建・二次的障害の防止

C        集団・社会適応能力の獲得と改善

D        自律及び就労準備への援助

 

        統合失調症の作業療法(山根p156〜、図60〜)

 

○ 統合失調症とは

入院している精神病患者の7割を占める

生涯有病率は人口の1割

大多数は30歳代までの発症

 

        全体の経過型

 a.波状再発(緊張型、予後)    b.慢性進行(破爪型、予後不良

 

 

 

 

 

 

        病期と病態像

@        前駆期

 病態:病前における趣味や就労経験などの能力が予後を左右する

 対応:脆弱性ストレスモデルで状況を理解する

    病前の能力・個性の情報収集

 

A        急性期極期(要安静期)

 病態:急性幻覚状態

    現実と世界連関の喪失

 対応:安全で安心できる刺激の少ない環境

    向精神薬

 

A〜B 寛解時臨界期(要安静期〜亜急性期)

 寛解過程の転換を告げる多くの現象が現れる。

 身体症状や身体疾患の出現、悪夢の再開、病的体験を語り始める、など。

 逆戻りを起こしやすいので、注意!この時期は入力が過剰で刺激避けられない。

 

B        早期作業療法

 病態:アンビバレンツな言動

    現実への移行を求める

 対応:リズミカルな身体的なもの(リラックス体操)

    作業活動を共に行い共有感覚を生かして働きかける

     ⇒ 現実感を結びつけて治療的動機づけを行う

 

C        回復前期(寛解期)

 病態:消耗感、集中困難

    病的体験の減少ないし消失

    まゆに包まれた感じ

    非現実感の存在

 対応:生活リズムの回復を行う

    無理をさせず余裕のある生活や空間を提供する

     作業活動や生活の中から受容体験、共有体験、愛他的体験をもたせる

     ⇒ 能力や限界、障害との折り合いをつけながら次への準備を行う

 

D        回復後期

    対応:必要な技能の学習や現実検討の援助

     ☆ 自律と適応の援助

       自律とは社会資源を使って自分で生活をコントロールしていくこと

       適応とは自分と対象との関係において適切な対処ができるようになること

       

   E 維持期(慢性期)

    経過:回復過程は個人や環境によりさまざま

       90%が再発

       再発メカニズム

        ⇒個体の再発準備性+社会環境上の刺激(脆弱性ストレスモデル)

     ☆ 再発を治療的利用(気軽に相談できる家族、人間関係、治療関係の樹立)

    病態:感情の平板化 

       談話の貧困

       快感消失―非社交性

       意欲喪失―無感情

       注意の障害

    対応:☆ 個別性がある(関与観察で障害と健全因子発見し要因を分析)

       ☆ 介入の仕方 

  ・ あたりまえなことの簡潔な説明

  ・ 基礎的な教育

  ・ 常識的な対処技能の獲得

  ・ 手順やモデルの提示

    ☆ 社会的治癒(寛解)の条件

  ・ 経済的自立

  ・ ほぼ円滑な対人関係

  ・ 一定の個人生活を楽しめる

        躁うつ病(山根p162〜、全書p69〜)

 

 ○ 躁うつ病とは

感情と気分の障害を中心とする内因性精神病で意思や欲動の障害伴う

うつ病:うつ状態のみを示す

躁うつ病:躁状態とうつ状態の両状態を示す

うつ病では単極性うつ病が両極性うつ病よりはるかに多い

発生頻度は人口の0.3〜0.5%だが10人に1人はライフサイクルのどこかで

うつ病にかかる危険性があるともいわれている

 

 ○ 症状の特徴

  @ 感情の障害 

   うつ病相:抑うつ、悲哀感、自己過小評価、自殺念慮、日内変動

   躁病相:高揚し上機嫌、疲労感じない、自己過大評価、他者批判、正義感、攻撃的

  

A        意欲・行為の障害

 うつ病相:精神運動制止(やらなければとわかっていてもできない)

       ⇒ 不安、焦燥感つのる

 躁病相:精神運動亢進(多動多弁でいつも何かに追われているように動き回る)

       ⇒ 配慮を欠く言動、衝動、金遣い荒く抑えられると激しく興奮

         社会的逸脱行為

 

B        思考の障害

 うつ病相:思考制止

      思考内容障害(貧困・心気・罪業妄想)

 躁病相:観念奔逸(思考速度早く多弁になる)

     誇大妄想(血統・宗教・発明妄想)    

   

C        身体症状

 うつ病相:睡眠障害、疲労感、倦怠感、食欲不振

 躁病相:睡眠障害、食欲亢進・減退

 

  ○ 治療

十分な休息をとる

薬物療法(回復することが多い)

精神療法(ある程度基本的日常生活が可能になったら)

 

 

  ○ 作業療法

  うつ病相:なじみのものより新しいもので簡単で繰り返しできるもの

       作業行程がはっきりしているもの

       失敗感がなく非競争的で実用的なもの

  躁病相:工程が単純ではっきりしているもの

      予測がつく組織的なもの

      短時間で完成し作品の見えがよいもの

      枠組みの設定ができるもの

 

        作業療法時の関わり方では自殺に注意する。他部門との連携を蜜にして対応を検討しておく。回復期に起こりやすい。また、セラピストの言動が患者の精神状態を不安定にさせることもあるので、とくに注意する。うつ病患者には安易な励ましやあやふやな返答をしない。躁病患者には指導や注意の言葉に気をつける。

 

 

        神経症圏の障害(山根p168〜、全書p90〜)

 

 ○ 神経症圏の障害とは

発症は青年期を中心に子供から老人まで幅広い

葛藤を起こしやすくそれをうまく処理できない素質をもつ者が、何らかの心理的打撃あるいは葛藤を契機に、不安を中核とした症状を呈する疾患

病識を持ち、現実検討能力保たれる

 

 ○ 神経症圏の障害の種類と特徴

@        不安神経症:女性に多く、ストレスと関連している

          いらいらし集中困難、振戦、筋緊張、頭痛、めまい、身震い、口渇

 

A        パニック障害:予知できない強烈な恐れの感情が一過性、急激かつ反復的に起こる

         持続的な恐れがある

 

B        強迫神経症:自分ではどうすることもできない考え(強迫思考)、その排除を目的に  

          繰り返される種々の行動(強迫行為)が起こる

        実行することにより不安が取り除かれて一定の順序で行動(強迫儀式)

        自己の意図に反して繰り返し考えが浮かんできて、それが不合理であ

        ることがわかっていても抑えようとすると不安がさらに増加してしま

        う。本人の意思に反しているが自身の思考として認識されている。

 

 

C        転換症状:困難な問題に遭遇するとき、気力、体力がなく身体の一部分が故障する  

       形でストレスから逃げようとして様々な身体症状があらわれる。

       運動麻痺、けいれん発作、視野狭窄、失声など

 

D        離人状態:「自分が自分でない」「外界との間に膜がある」などと表現される

       言語化しずらい症状で、うつ病、パニック障害、強迫性障害と関連して

         生じることが多い。

 

E        外傷後ストレス障害(PTSD):事件や事故、知人の死などのストレスが終わったあともなお、心気状態、不安状態、抑うつ状態が持続的に続く

 

○ 作業療法の援助

感情表出の手助け、自己愛の充足、健康な機能の強化、社会適応をはかる

初期には安静と保護

作業療法導入時にはとくに受容的、指示的関わり持つ。症状にはふれない。

現実認識ができてきた状態では、愛他的活動を行い、擬似社会性の利用のため集団作業療法を導入する。

 

○ 留意点

不安発作は救助サイン

転換症状では身体機能の改善を重視する

強迫症状には支持的に対応し共感を持って接する

心気症状にはセラピスト自身が身体機能への関心を示し支持的に対応する

離人症状には小さな怪我や事故に留意し、自殺企図や自傷行為に注意する

 

 

        境界性人格障害(BPD

 

 ○ 境界性人格障害とは

発病年齢は10代後半から20代前半にかけてが多い

症状は抑うつ、対人恐怖、強迫行為、粗暴行為、万引きなどの反社会的行動、

自殺企図、自己破壊行為といった不安定な対人関係など

 

 ○ 特徴

自己像が不明瞭で混乱したえず空虚感があり、自殺の脅しや自傷行為伴う

他人から見捨てられるのではという恐れと回避しようとする努力がある

周囲の人間が巻き込まれてしまう。どうしたら自分に目を向けているのか考える

他人をgoodbadの2つに極端にわけてしまう態度をとる

        生活上の特徴

不安定な対人関係や症状で疲れ果ててしまう

仕事や社会生活がうまくいかない

自己破壊的や他者を巻き込んだ形で行動化してしまい、家族や周囲の人の生活に影響が及ぶ

 

        作業療法の援助

@        治療契約(説明と同意):参加における約束事やルールをきちんと伝える

 

A        治療者としての基本的態度

一貫した受容的態度をとりつつも一定の距離を保ち、受け入れられることとそうでないことをはっきり示す

見捨てないというメッセージを伝達していく

共同探索者的態度をとる。第三者的な視点で今を一緒に考えていく

時間外での対応、援助を求めてくるが、慎重に対応する

 

Bチームアプローチ:チーム内で検討し役割の再確認行う   

 

 

        アルコール・薬物関連障害(山根p178〜、全書p97〜)

  

        アルコール・薬物関連障害とは

アルコールに対する依存によって生じる精神および行動の障害の総称

  

        依存

精神依存:摂取に対する強い欲求

身体依存:長時間体内にある結果それが適応して正常に近い機能となる

      効果が薄れると離脱症状を呈する

耐性:長期の摂取で初期の効果を得るにはより大量の摂取が必要となる

 

  ○ アルコール依存症候群とは

摂取への強い欲求または強迫感

適時、適量が困難

離脱症状の存在

耐性

それに代わる楽しみや趣味を無視

明らかに有害な結果が起きているにも関わらず継続して摂取

 

        治療

薬物療法(シアナマイド)

個人・集団精神療法(断酒会など)

急性期では身体的治療

 

        作業療法の援助

リハビリの目標は明確。「飲酒あるいは薬物摂取を完全に断ち切って、摂取により生じた身体的・心理的・社会的障害を可能な限り軽減すること」

慢性的な依存症状に対しては「本人の意思」が大きい

目的としては体力改善、人間関係維持、自己点検機能の改善、酒害、薬害への自覚

回復後期には退院後の生活へ向けての援助を行う

 

        留意点

現実に対しての対応が甘く、他罰的でありながら他者に依存する

患者ごとの個別的な対応に配慮する

作業場面ではがんばりやつっぱり、誇大傾向が見られ、集団運営に対して役割意識を支持する

離脱後は生活への耐性が低いため集団での患者の観察を行う

作業中の道具・機械の取り扱いに注意する

 

 

        老年期の精神障害(痴呆)(山根p184〜,全書p124〜)

 

        痴呆とは

知的機能の低下、全般的認知能力の障害で意識は覚醒している

症状に影響する因子として、痴呆の原因、病前性格、環境的支援、合併症、疲労、

ストレスなどがある

 

        痴呆を起こす疾患

アルツハイマー病

多発性脳梗塞性痴呆

一次的に出現(パーキンソン病、ピック病、クロイツフェルトーヤコブ病)

二次的に出現(ハンチントン舞踏病、多発性硬化症、後天性免疫不全症候群)

 

 

 

 

 

        作業療法の援助

@      痴呆評価:HDSR、N式、MMS、国立精研式痴呆スクリーニングテスト

 

A      脳障害の違いによる工夫

    老年痴呆:孤立しないように関係ができる配慮をする。何となく安心できる雰囲気 

         の中で、共にいる者がある感じ。活動は固定化パターン化し繰り返した

         ほうがよく、過去の経験を生かして簡単で予測が安易にできるもの。

    脳血管性痴呆:性格特性はっきりしているため、得意なことや安心できる活動など

           個別的対応必要。仕事的な要素があるものが良い。

 

B     グループ活動

 ・人間の帰属欲求を満たし、孤立から救うことができる。また、感情的な安定

    を図ることができる。社会性、愛他的体験、喜び、趣味、運動、自己表現、

    成功体験の機会が得られ、自己尊厳が取り戻せる。

   

C     活動の選択

シンプルで集中を持続できる時間内である。また、気分転換も図る。

スタッフは柔軟性を持って対応し、活動レベルはできるかぎり大人のレベルで行う

能力以上のものは与えない

慣れ親しんだ活動を利用する

わかりやすい単純で繰り返しのある遂行過程を含む活動 

ex)ADL訓練、園芸、運動、RO、回想法

 

 

        あと、精神の評価で応用問題がでる可能性あり!

例題の患者がでて他部門からどんな情報を得るのか、どのような評価を行うのか、項目を列挙せよ、など。でる可能性あり!