BREWING LOVE WALLACE HUO 霍建華(ウォレス・フォ) |
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| 明朝の中葉、正徳帝の叔父、鐵膽神侯は、先帝の命で、皇帝の後ろ盾となる「護龍山荘」を創設した。津々浦々に情報網を張り巡らした「護龍山荘」はあらゆる朝廷機構を凌駕し、絶大なる権力を有するようになっていった。 秘密警察組織、東廠の長官である、太監(宦官)の曹正淳は、汚職官吏や高官と結託して私腹を肥やし朝廷の腐敗の元凶と目されていた。曹正淳は目の上のこぶである「護龍山荘」に対して敵愾心を燃やし両者の対立は日増しに激しさを加えていった。 神侯の配下には、天・地・玄・黄の令牌(鑑札)を持つ、武術に優れた四人の密偵がいた。神侯が自ら養育した段天涯、歸海一刀、上官海棠と、後に「護龍山荘」に加わった成是非の「四大密偵」が本編の主人公たちである・・・。 |
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段天涯(李亞鵬) 沈着冷静で忍耐強い義侠の士。神侯の命令で日本に渡り、伊賀の忍術を学ぶ。また、眠狂四郎より「幻剣」を伝授される。しかし、かの地で恋に落ちた柳生但馬守の息女との関係が、後々まで彼を苦しめる。「天字第一号」と称される。 |
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歸海一刀(霍建華) 寡黙で孤高を好むが、内に烈風灼熱の心情を秘める武術の達人。幼少のとき、父を殺され、仇討ちを誓って神侯のもとで修行する。一刀のもとに敵を倒し、二刀目はないというのが名前の由来である。しかし父の残した秘技「雄覇天下」の修得によって、運命が大きく狂ってしまう。「地字第一号」と称される。 |
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上官海棠(葉[王旋]) 情愛深く、機知に富む才人にして佳人。無痕公子のもとで医術、薬学、占星術諸般を修める。天下一流の才能を持つ者たちが集う「天下第一荘」の主。日頃は男装で通し、女性であることを隠している。「玄字第一号」と称される。 |
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成是非(郭晉安) 天衣無縫で、野育ちの無頼漢だったが、不思議な因縁で、古三通から絶技を伝授され、さらには雲蘿郡主と恋仲になる。しかも彼には意外な出生の秘密があった。「黄字第一号」と称される。 |
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雲蘿郡主(陳怡蓉) 皇帝の妹という身分でありながら、武芸好きのじゃじゃ馬。しかし成是非を一途に愛し、幸せを掴む。 |
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鐵膽神侯(劉松仁) 皇帝の叔父で、本名は朱無視。若い頃、武芸を極めるため、身分を隠して江湖をわたり、古三通と知り合い、その従姉妹である素心を愛するようになる。 |
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柳生但馬守(倉田保昭) 日本の武芸の名門、柳生流の当主。段天涯のために、嫡子十兵衛と長女雪姫を失い、激しい憎しみに燃える。 |
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柳生飄絮(高圓圓) 但馬守の次女。姉の恋人であった段天涯を愛するようになり、彼を仇敵とする父の命令に苦しむ。後に天涯と結婚し、一子をもうける。 |
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古三通(張衛健) あらゆる武芸に通じて、武術各派に挑戦し、「不敗頑童」と称される。朱無視と友情を結ぶが、彼と勝負を賭けて破れ、皇宮の地下牢に長年幽閉される。 |
* あらすじが最後まで書いてありますので、そのつもりでお読みください。
* エピソードの収録集は香港版DVDをもとにしています。 タイトルは私が便宜上つけました。
| 出雲国の利秀公主が明の皇帝に入内することになり、大臣の崔烏丸と都に到着した。 その頃、しがないチンピラの成是非は、盗みがもとで報復を受け、あやうく宦官にされそうになる。からくも脱出した彼は、偶然、皇宮内の地下牢に30年もの間幽閉されていた古三通という老人と出会い、「金剛不敗神功」を伝授され、さらに身体中に各派の武術の秘伝を書き込まれた。 成是非は皇宮の中でさ迷っているうちに皇帝の妹、雲蘿郡主の居室に紛れ込む。無類の武芸好きで世間知らずの郡主は、成是非の大法螺に乗せられ、彼が古三通の技を伝授されたことを知ると、たちまち絶大なる信頼を寄せてしまう。彼女は何者かに拉致された母の太后の探索を成是非に依頼する。しかし、彼は太后を拉致した犯人の烏丸に逆に捕らえられ、大甕の中に押し込められる。そのかたわらの甕の中には太后がいた。 神侯は、利秀公主と烏丸の挙動を怪しみ、天涯と一刀に二人の身辺を探るよう命じた。一刀は天涯とさして年齢も違わず、武功も彼より上回っているのに、天涯を師兄と呼ばなければならないことに不服であった。一刀の感情に気づいていた天涯は、一刀に対し、今度の任務で先に功績を挙げた方が「天字第一号」を名乗ろうではないかと提案する。 利秀公主を見張っていた天涯は、ある晩、彼女が池の中に飛び込もうとしているのを見て、その動機を疑いながらも、彼女を助ける。公主は隙を見て、毒を仕込んだ簪で天涯を刺し、体の自由を奪い、狼藉者として捕らえさせる。天涯は東廠に引き渡され、拷問を受けるが、一刀によって救出される。 曹正淳の勧めるまま利秀公主の寝所に赴いた皇帝を、彼女は喜んで迎え入れた。入浴する彼女の美しさに目を奪われている皇帝に嫣然とほほえんだ公主は、突如皇帝に襲いかかる。そこに天涯と一刀が現れて皇帝の危機を救い、さらには、烏丸を殺して太后を救いだした成是非が合流して、公主になりすましていた刺客を倒す。事件解決後、勝負の決着はどうするかと問う天涯に対し、一刀は、自分には「地」の立場がふさわしいことがわかったと淡々と語る。 大功をたてた成是非は、太后の口添えもあって、「護龍山荘」の4番目の密探になるよう皇帝より推挙される。しかし、神侯は成是非の身元を怪しんでおり、自分が課す試験を通過したならば、「護龍山荘」に迎えいれようと彼に言い渡す。「護龍山荘」の試験は、これまで誰も通過したものがなく、ほとんどが死傷をまぬかれないと聞いた雲蘿郡主は「護龍山荘」にかけつけ、彼女の助力もあって、是非はからくも難関を突破する。 成是非が意気揚々として山荘に戻ると、手傷を負った海棠がいた。出雲国の刺客が来襲し、雲蘿を連れ去ったというのだ。成是非はすぐに二人の黒衣の人物の後を追う。郡主が陵辱されそうになるや、怒りのために「金剛不敗神功」によって、全身金色の身体に変身して、大暴れする。実は、黒衣の男たちは天涯と一刀であり、この拉致狂言も、試験の一環であったことが明かされる。神侯は、成是非の武術がいまだ未熟であるとして、失格を申し渡す。何より成是非は、好意を抱き始めていた郡主までもが彼を騙していたことに傷つき、彼らの前から姿を消してしまう。 |



| ある日、本物の利秀公主と崔大臣と見られる遺体が発見され、皇帝は神侯に真相究明を命じた。神侯は偽の公主たちが日本の柳生流の使い手であったことに気づいていた。また、東南沿岸地方に勢力をもつ巨鯨幇のもとに、日本の浪人たちがしきりと出入りしているという情報に基づいて、神侯はかつて日本で忍術を学んだことのある天涯を探索に派遣することにした。海棠も同行を申し出て許されるが、一刀には都に残るように命じた。一刀は不満を覚えながらも神侯の命に従った。 天涯、一刀、海棠は幼い頃からともに神侯のもとで修行していたが、海棠が女であることを知るのは神侯だけだった。烏丸によって海棠が負傷した折に、手当てをしたことで、天涯は彼女が女性であることを初めて知った。しかし、実は一刀も、以前、稽古から戻る途中、偶然にも海棠が池で沐浴している姿を見てしまい、もともと感じていた海棠への好意はいつしか愛情へと変わっていった。海棠が天涯を慕っていることに気づいた一刀は、その気持ちを伏せたままにしていたが、彼女が天涯と長旅に出発するとなると、心穏やかではいられなかったのだ。 東南海岸に到着した天涯は、偶然、伊賀での師弟だった小林正と再会する。天涯は小林より、巨鯨幇に出入りする日本の浪人の背後に、宿敵の柳生但馬守がいることを聞かされて驚く。海棠から、但馬守との関係を説明するように求められ、天涯は、かつて日本で忍術を学んだ時のいきさつを語り始めた・・・。 天涯は神侯の命で日本にわたり、伊賀武蔵の門弟となった。天賦の才に恵まれた天涯はすぐに才覚をあらわした。江戸に出た折、武術の名門である柳生但馬守と娘の雪姫の知己を得、天涯と雪姫はたちまちのうちに恋に落ちた。ある日、天涯と小林とは、ささいなことから、但馬守の子息である柳生十兵衛といさかいになり、ある剣客が両者の仲介に入った。彼は一流の剣術の使い手で、眠狂四郎と名乗った。 天涯は眠に剣術の教えを請うことに決め、日参するうちに眠の信頼を得て、秘儀の「幻剣」を伝授された。以前から「幻剣」の伝授を願っていた柳生十兵衛は憤って、眠に毒を盛り、解毒薬と引き換えに秘技の伝授を迫った。しかし眠はそれを拒絶し絶命する。天涯は師の仇となった十兵衛を崖の際に追い詰め、十兵衛は落下して死んだ。 天涯は息子の仇として但馬守より追われることになったが、天涯を愛する雪姫が彼の身代わりとなって、父の一撃を受け、命を落とす。但馬守に手傷を負わせ、からくも逃れた天涯は雪姫の墓前で、生涯妻を娶らないと誓い、傷心のまま故国に戻った。 海棠は、天涯の雪姫への愛情がいまなお強いことを知り、これ以後、天涯への思慕を絶つことを心に決めた。 巨鯨幇の調査を続けた天涯たちは、幇主の李政楷が詩歌や書画を愛する文人であり、実務方面はすべて親族の李長老に一任していることを知る。李長老は幇主の信任をいいことに、柳生と結託し、密かに幇主の地位をねらっていた。 但馬守は、息子と長女雪姫を失ったため、次女の飄絮を自分の後継者に決め、柳生家のあらゆる武芸を仕込んだ。飄絮は姉の恋人である天涯をいつしか愛するようになっていたが、父は家の仇として、天涯を殺すよう厳しく彼女に命じた。天涯と但馬守が再び剣を交えたとき、板ばさみになった彼女は、混乱のうちに誤って父を剣で刺し殺してしまい、そのショックでひどい幻覚に苦しむようになる。 巨鯨幇の内紛を解決した天涯と海棠は、飄絮を伴ってすみやかに帰京することにした。神侯は各地より名医を集めて飄絮の治療をさせた。彼女が少しずつ快方に向かった頃、天涯は求婚し、飄絮を感動させる。神侯は二人の結婚を許すが、その条件として、飄絮が柳生家との縁を断ち、中国人として生まれ変わるように求める。飄絮はそれを受け入れ、その証として自らすべての武功を絶った。 婚礼の日、神侯は飄絮の内力を試し、武功がすべて失われていることを確認する。やがて飄絮は天涯の子を身ごもった。天涯は、完全に病の癒えていない彼女の治療と安全のために、蛇島に隠棲することを神侯に願い出る。公務を退くことを許された天涯と飄絮は、まもなく都を離れた。 |



| 成是非が姿を消してからというもの、雲蘿郡主は情緒不安定になり、周囲に八つ当たりをくりかえしていた。彼女はある日、曹正淳の義子である若い太監にそそのかされ、成是非の行方を求めて市中にお忍びで出かけた。しかし、曹正淳の策略により、郡主の身分をかたった罪に問われ、牢に押し込められてしまう。そこに一刀が現れ、若い太監を殺し、郡主を救出する。義子を失った曹正淳は、いよいよ神侯への復讐の念に燃える。 雲蘿の成是非への思いが曹正淳に悪用されたことから、神侯は成是非を連れ戻すことを郡主に約束する。その任務にあたることになった海棠は、神侯の情報網によって、彼の手がかりがあると見られる「富貴村」を訪ねた。そこは名前に反し、「大龍、二虎、三豹」と呼ばれる三悪が悪事をほしいままにし、貧困のどん底にあった。海棠はそこで、旅の商人風の男と出会う。世間をよく知る彼女は、この人物が悪人ではないと感じたが、たびたび不審な行動をとるのをいぶかしく思う。 ある日、大勢の工人たちが村にやってきて、道路や建物を修復し、大量の食料や日用品が運び込まれ、困窮した村人に配られた。人々は突然の幸運に喜ぶが、理由がさっぱりわからない。海棠は、この裏にあの商人風の男がかかわっているのではないかと疑う。実は、この人物は萬三千という天下随一の富豪で、身分を隠し、江湖を渡り歩いて見聞を広めていたのである。彼は村人の窮乏に同情し、一夜にして村を救済してみせたのであった。三千は海棠と知り合って彼女の魅力の虜になり、妻に娶りたいと願う。 一方、成是非は「三悪」に捕らえられており、彼らの悪妻たちにより、いずれも醜い娘たちの婿にさせられそうになっていた。海棠と三千は彼らの根城をつきとめ、成是非を助けだすが、崖っぷちに追い詰められてしまう。そこで、三千は伝書鳩を飛ばし、2台のグライダーを呼び寄せて一同はからくも脱出する。海棠と三千を乗せた一台は無事「富貴村」に着地するが、成是非の乗った一台は、彼が非常用の紐をいたずらしたために、行方不明となってしまう。 雲蘿は成是非の消息を待ちわびるが、ついに我慢できず、侍女とともに「護龍山荘」に押しかける。神侯は既に成是非が安楽鎮にいるという情報をつかんでおり、それを聞いた郡主はただちに出発する。安楽鎮一帯は曹正淳の縄張りであるため、神侯は一刀に、海棠を助けて成是非を連れ戻すよう命じた。 安楽鎮で郡主は成是非を見つけたものの、東廠の手の者によって拉致されてしまう。彼らはそれぞれ猛毒を武器にする「五毒」と呼ばれる面々だった。成是非は追いついた海棠とともに郡主の行方を追うが、逆に毒にあたってしまう。郡主を何とか奪回したものの、成是非の体に毒が回り、危険な状態となったのを見た海棠は、強い解毒作用を持つ「天山雪蓮」を求めて皇宮に忍び込むことを郡主に告げる。 海棠は太監に変装し、皇帝が入浴する浴徳池に忍び込んだ。曹正淳はいち早く海棠の進入を察知して一帯をくまなく捜索する。彼女は追っ手に包囲され、万事窮すというときに、突如覆面の人物が現れ、彼女を助ける、曹正淳はそれが一刀であることを見破る。一刀はからくも曹正淳らを撃退し、海棠を連れて脱出する。 一刀は隠れ家で、負傷した海棠に「七色紫蘿」を煎じて飲ませるが、自分も曹正淳の掌拳を胸に受けて、重い内傷を負っていた。それを彼女には隠すために家を出て、竹林まできたところで倒れてしまう。混濁した意識の中で、一刀は父百錬の幻覚を見る。父は一刀を叱咤し、仇討ちの意志を確かめると姿を消した。やがて意識を取り戻した一刀は、内力が戻るのを待って隠れ家に引き返す。一刻の猶予もならない海棠は置手紙を残して、すでに出発したあとだった。 海棠は天山雪蓮を持って、郡主たちのところに駆けつけるが、五毒たちによって蜘蛛の糸にからめとられてしまう。そこに一刀があらわれ三人を助ける。郡主は雪蓮の花を噛み砕き、成是非の口に含ませる。このとき、五毒の生き残りが再びあらわれ、一刀と海棠は応戦しようとするが、一刀は突然内力が失われ、身動きできなくなってしまう。幸い、毒から回復した成是非が敵を倒すが、一刀はその場に昏倒する。そこで初めて海棠は、一刀が自分を助けるために曹正淳の一撃を受け、内傷を負ったことに気づく。彼女は雪蓮の効力が残っている成是非の血液を一刀の口に含ませ、彼は一命をとりとめた。 海棠は一刀を看病しているとき、自分が失くしたと思っていた玉佩を彼が身につけているのに気づく。一刀が目覚め、彼女が夜を徹して看病してくれたことに礼をいうと、「あなたは何度も助けてくれたのだから当然のこと。でも私はあなたの好意に値するような人間ではないわ」と告げる。一刀は内心の失望を隠して、ひとこと「わかっている」と彼女に応えるのみであった。 一同は都に戻り、成是非は神侯から「黄字」の令牌を受け、正式に密探として「護龍山荘」に加わった。雲蘿は、成是非を交趾国の王子と称して彼女と結婚させ、皇帝の身近で警護にあたることにしてはどうかと提案する。曹正淳は彼らの意図を察知し、成是非の正体を皇帝の面前で暴こうと目論むが、成是非の機略がまさり、皇帝は彼と雲蘿との結婚を正式に認めた。 しかし郡馬(郡主の婿)としての皇宮での生活は、成是非にとって窮屈すぎた。彼は雲蘿に黙って再び飛び出してしまう。雲蘿は一計を案じ、自分が是非に捨てられて自殺したことにし、一刀らが成是非を連れ戻して雲蘿のなきがらを見せる。悲嘆にくれる成是非は、やがて種明かしをされて大いに怒るが、郡主は自分も皇宮を離れ、彼とともに市井の人間になる決意を明かす。郡主の真心に打たれた成是非は、彼女と共に生きることを約束する。その後、一刀が皇宮内での帯刀を許され、皇帝の身辺で警護の重責を担うことになった。 |



| 事態が一段落すると、神侯は海棠を伴って天山天池に赴くことにした。この地には万年氷の洞窟があり、神侯が生涯の愛を捧げた女性、素心が冷凍されたまま眠っているのだ。若き日、神侯は武芸の修行のため身分を隠し江湖を遍歴するうち、縁あって武芸の誉れ高い古三通と友情を結んだ。彼の従姉妹である素心を紹介されると、神侯は彼女に心を寄せるようになった。 その後、三通は武林各派に挑戦し、「不敗頑童」とあだ名された。三通は、八大門派と太湖で決戦して大勢を殺傷するという事件を起こし、神侯は朝廷より三通を捕らえるように命じられる。神侯と対決することになった三通は、ひとつの賭けを申し出る。彼が神侯に負ければ、生涯、朝廷の虜囚となることに甘んじるが、もし神侯が負ければ生涯、三通の意のままになるというもの。 対決が始まり、必殺の一撃を神侯が繰り出そうとした瞬間、その一撃を受けたのは、ほかならぬ素心であった。驚愕した神侯は瀕死の彼女に神薬の「天香荳?」を飲ませ、仮死状態のまま天山の氷室に安置していたのである。しかし、二人が到着すると、彼女の姿はどこにもなかった。激しく取り乱した神侯は、この秘密を知るのは自分と海棠だけであるため海棠を疑い、彼女は暫時職務の停止を申し渡された。 傷心の海棠に対し、一刀は彼女を慰め、初めて彼女への愛を告げた。その後、一刀は海棠を伴って、母親が隠棲する水月庵を訪れる。母は海棠をひと目で気に入り、感情を失ったかにみえた我が子の心中に、いまだ人を愛する心が残っていたことを喜ぶ。 一刀が母のもとを訪れたのは、ある目的のためでもあった。彼が曹正淳と戦ったとき、それまで身につけた武術だけでは勝てないと悟り、父が残したはずの「雄覇天下」の刀譜を修練するつもりだったのだ。しかし父の遺品をくまなく捜してもそれらしきものはない。一刀は怒りにまかせて衣類を火に投じた瞬間、炎のなかから刀譜の文字が浮かび上がってきた。 神侯に仕える天下随一の探偵である張進酒が水月庵を訪れた。素心を拉致したのは曹正淳の意を受けた東廠の一派であったが、成是非と雲蘿公主の働きで、素心は無事、「護龍山荘」に保護されたこと、神侯は海棠に詫び、職務に復帰するようにとの伝言が彼の口から告げられた。 一刀はかねてより、父百煉殺害に関する探索を進酒に依頼していた。18年前、辟邪山荘において、百煉は殺害されたが、当時そこで働いていた給仕の居場所を、進酒はつきとめていた。給仕の証言では、その晩、剣驚風、麒麟子、了空の三名が百煉を待っており、やがて熾烈な一戦がはじまると、恐ろしさのあまり給仕は気を失ってしまった。気がつくと、この三名が既に百煉の遺体を運び出そうとしていたというのである。 一刀はこの三名が父の仇であると断定し、まずは麒麟子のもとに赴いた。彼は一刀の来意を悟ると、百煉の位牌を見せ、確かに自分が手を下したことを認めて自刃した。しかし、門弟たちは、遺体の義手を示して、20年前に麒麟子は両腕を切断しており、百煉を殺害したはずはないと涙ながらに訴える。一刀は、彼が他の両名をかばって死んだのだと考え、剣驚風を探し出そうとする。 しかし剣驚風は海棠を主とする「天下第一荘」の客人となっていて、海棠は一刀に彼の身柄の引渡しを頑として拒絶する。一刀は海棠と事を構えるのは避けたが、屋敷の前を一歩として退かなかった。双方のにらみ合いが続くなか、待僕が、剣驚風が自害したとの知らせを持ってくる。驚風の人柄を知る海棠は、彼が下手人とは断じて信じず、一刀は三人目の了空に真相を糾すべく、少林寺に赴くことを決意する。 海棠と共に少林寺に乗り込んだ一刀は、門弟たちと激しい一戦を交えたのち、了空の師弟、了凡大師と対峙した。激するあまり抜刀した一刀を阻止する海棠の声にひるんだ隙に内力を損ねた一刀は、やむなく海棠に伴われて下山する。その間、了凡は了空を探すが、彼は既に姿を消していた。 下山した一刀の前に忽然と現れた僧は了空大師であった。一刀は問答無用とばかり、了空に切りつける。彼はその一撃を軽々とかわしたが、次の瞬間、微笑むなり、一刀の太刀を進んでわが身に受ける。驚愕する一刀。了空は、これで仇を討ったのだから、即刻、師兄の了結を探し出して後事を託すようにと一刀に言い残し、息絶える。 師兄の非業の死を知った了凡は、救援にかけつけた武門各派とともに一刀を取り囲む。一刀は突然、凄絶な笑いを浮かべ、交戦するうちに正気を失ってしまう。やがて気がつくと、山野に海棠とともに倒れていた。彼女は、一刀が理性を失って多くの人を殺傷し、海棠自身は敵の毒にあたったのだと言う。一刀は海棠の手当てをしながら、「雄覇天下」の修練の結果、自分が「走火入魔」に陥ったことを悟って暗澹たる思いになるのだった。このとき海棠は、彼に対する愛情をさりげなく伝える。一刀は、彼女が少林寺にまで付いてきてくれた心情を理解し、暗闇の中で一筋の希望を感じることができた。 その後、一刀が百煉の霊堂で無事、仇を討ったことを告げるため瞑目していると、突然雷鳴が轟き、父の棺がばらばらになった。驚く一刀が凝視すると、遺骸の背後に匕首を発見する。それはかつて、父が愛する妻に与えたものであることを一刀ははっきりと覚えていた。父を殺した真犯人が誰かをついに悟った一刀は、母のもとに急ぐ。母はこのとき剃髪しようとしていた。 母は一刀に、辟邪山荘で起こった顛末を静かに語りだす。「雄覇天下」を修練したことによって走火入魔に陥った百煉に対して、義兄弟の契りを結んでいた了空大師たち三人は、何とか彼の魔性を除こうとして集まっていた。そこに狂乱した百煉が進入し、防戦しきれずに彼らの命が危うくなったとき、妻の路華濃は、やむなく背後から夫を刺して、三人を守ったのである。彼らは路華濃にこのことは絶対口外しないようにと堅く口止めし、真相は闇に葬られた。母は語り終えると、仏陀の故事を引用し、一刀に討たれるのを静かに待った。 一刀は実の母を父の仇として討つべきか否か煩悶した末に、ついに手を下すことはできず、戸外に飛び出す。そこに、少林寺の僧が現れる。亡くなった了空大師の師兄、了結と名乗り、心魔を除きたいならば、自分のもとに身を寄せるようにと静かに語るのだった。しかし混乱の極みの一刀は有無をいわせず刀を向けた。驚いたことに、彼の「雄覇天下」は、少林「大悲掌」にはまったく歯が立たず、了結は姿を消した。 一刀は「大悲掌」に勝つために、更に高度な武術を身につけるべく、再度父の遺品を探った。そしてあらたな刀譜を発見する。それは「阿鼻道」三刀と称される強力な刀法であったが、それを学ぶ者は、さらに魔性の闇へと引きずり込まれる邪法であった。 満月が近づくと一刀の狂乱はひどくなり、見境なく魔刀を振るうようになった。路華濃はそんな我が子を、断腸の思いで見ていた。ある日、抑制のきかなくなった一刀は、「護龍山荘」に乱入する。そこに居合わせた成是非、雲蘿、素心はとても阻止できず、地下の密室に逃げ込む。 しばらくそこに隠れている間に、素心は自分の過去を語り始めた。神侯が彼女との結婚を願いながら、兄の皇帝に反対されてやむなく去ったのち、三通と再会した彼女は、彼との間に男児をもうけた。やがて三通と神侯との決戦の知らせを受けると、赤ん坊を隣家の女性に預けて、彼女は現場にかけつけ、神侯の一撃を受けて、そのまま20年が経過してしまったのである。 素心がそこまで語ったとき、神侯が現れ、三人はようやく解放された。一刀は既に姿を消していた。神侯は天涯を蛇島から呼び戻し、海棠とともに一刀を「護龍山荘」につれ戻すよう命じる。 二人は水月庵のそばの湖畔で一刀に遭遇する。彼は発作が起きると、母を傷つけないために、湖中に身を沈めて狂気が去るのを待つということを繰り返していたのだ。彼は両人を見ると、自分に発作が起きないうちに、早く帰れと冷たく言い放つ。二人はやむなく縄をかけようとするが、そのとき一刀を狂気が襲い、天涯は負傷し、海棠は一刀の手によって危うく殺されかける。 しかし、彼女の首に手をかけた瞬間、混乱した一刀の脳裏の底に、少年の頃の彼女との思い出が蘇ってきた。彼は思わず手を離すと、脱兎の如くその場を逃げ出した。どこをどう走ってきたのかもわからず、彼は突然虚脱状態に陥り、そのまま昏倒する。そこに居合わせたのは彼を捜索する武林門派の面々で、一刀はついに彼らに捕らえられてしまった。 素心は、彼女がかつて赤子を預けた三里鎮に、手がかりを求めて訪れることにした。しかしそこは12年前に大火に見舞われ、様子が一変してしまっていた。素心は孤児院を開いていた盲目の老女に出会い、彼女こそ、かつて赤ん坊を預けた女性だとわかる。子どもとは大火の折に離れ離れになり、行方がわからなくなっていた。しかし彼女の口から、子どもの名を成是非と名づけたと聞き、素心は運命のめぐり合わせに驚愕する。そして本人には時期がくるまで明かさないことを心ひそかに決意した。 その頃、一刀を捕らえた各門派の面々は、殺された同門たちの復讐心に燃えてはいたが、少林寺の了凡大師らの意見で、国法にゆだねることに決めた。それを口実に曹正淳が一刀に厳しい拷問を加えていると、海棠と成是非が一刀を救出しようと現れる。両者が相対するところに、今度は神侯と了結大師が登場し、了結は、師弟了空の遺言で、一刀の心魔を除くよう託されているので、彼の身柄を預かりたいと一同に申し出る。武林の面々は少林寺の高僧の願いを拒否するわけにはいかず承認するが、曹正淳は内心憤懣やる方ない思いだった。 了結は一刀を少林寺に連れ帰り、「仏祖除魔丸」を服用させ、以後四十九日間「安心経」を唱えるように勧めた。しかし少林寺の弟子たちは、一刀の狂気が再発するのではないかと怯えたため、大師はやむなく一刀とともに下山し、達磨洞に身を寄せた。 了結の助力で小康を得たある日、一刀は了結の許可を得て、母の様子を見に行くことにする。母の無事を確かめ、一刀が達磨洞に戻ると、黒装束の人物と了結が争っていた。一刀はこのときすでに内力をすっかり失っていて助力もかなわない。覆面の人物が「雄覇天下」の技で大師を倒した瞬間、一刀は足場を失い洞窟の中に落下した。そこに海棠と天涯が一刀の捜索に現れる。一刀は了結を殺したのは自分ではないと語り、それを信じた海棠は一刀にしばらく付き添うことにした。大師が一刀に殺されたと思った面々が彼を必死に捜していたからだ。 一刀と海棠は水月庵に身をよせることにしたが、そこで、一刀は再び狂気の発作に襲われた。「仏祖除魔丸」もすでに無く、心魔を除くことが難しいと悟った一刀は、二人を守るため、自ら右腕を切り落としてしまう。母と海棠は心の痛みを感じながらも、これで、一刀の狂気が永劫に除かれることを心から願うのだった。 |



| 一刀が右腕を失って療養している間に、宮中では奇怪な事件が起こった。御殿医と太后の兄である司空国舅が、たて続けに何者かに殺害されたのである。傷口が「雄覇天下」の刀法であったことから、一刀がその犯人と目された。曹正淳は、一刀の狂気が再発した場合の責任を神侯がとるという以前の公約を持ち出して、神侯を召還するよう皇帝に進言した。 一刀が犯人ではありえないことを訴える海棠を制し、神侯は、萬三千に何事かを託した後、自ら入牢する決意をする。 獄中の神侯は、曹正淳の意のままに様々な拷問や屈辱を受けることになった。成是非、雲蘿、天涯、海棠らは神侯を救出しようと必死に試みるが、逆に東廠の術中におち、主を失った「護龍山荘」は瞬く間に曹正淳の包囲網に押さえ込まれていった。やがて萬三千が、海棠のもとに、神侯が辱めに耐えられず、ついに獄中で自刃したという知らせを持ってくる・・・。 曹正淳の指揮のもと、神侯の棺を運ぶ葬列が進む中、成是非、天涯、海棠が行く手をさえぎる。東廠の配下らが彼らと交戦を始めると、突然、棺の中から、神侯が飛び出してきた。彼の死は曹正淳を欺く狂言だった。両人は改めて、絶技を繰り出し激しく戦う。双方互角かに見えたが、「吸功大法」で曹正淳の功力を奪った神侯は、ついに宿敵を倒した。 曹正淳の死後、誰はばかることがなくなった神侯は、素心との結婚を公にする。太后は先帝の意向もあり結婚には反対であり、高官たちもこぞって反対した。しかし神侯は頑なに自分の意思を曲げようとはせず、来月七月十五日を婚礼の日と告示する。ここに至って、皇帝、太后らと神侯との対立は周知の事実となった。さらには萬三千が海棠に求婚する。 婚礼が明日に迫った晩、海棠が戸口で物思いにふけっていると、突然の人影があった。「一刀!」彼女は思わず声をはずませる。しかし、一刀の声は苦しげだった。「おめでとうと申し上げなくてはね、萬夫人.。」一刀の心情が痛いほどわかっていた彼女は、語るべき言葉を必死に探った。「あなたが来ることはわかっていたわ。きょうは、心魔が完全に除かれる満願の日ですものね。」「心経を唱える間はたえず苦痛に耐えなければならなかった。しかし海棠、君のことだけを支えにして乗り切れたのだ。それなのに、婚礼の知らせを聞くとは・・・。萬三千は富の力で何でも思い通りにできる。それにひきかえ、自分には武芸以外に何もない。そして今はそれすらも失ってしまった。」ここまで聞くと海棠はたまらず一刀に告げた。「あなたは、すべてを失ったように思うでしょう。でもひとつだけ持っているものがある、それは私の心よ。私の心はこれからもずっとあなたのもの。」 一刀が狂乱したとき、武林門派の激しい恨みを買った。彼らの報復の手から一刀を守ることができるのは三千の財力だけだ。一刀を守ってくれることを条件に、海棠は三千の求婚を受け入れたのだった。もはや今生では一刀と結ばれることは叶わない。彼女は必死に一刀にわかってもらおうとした。しかし、混乱した一刀は、無言のまま背を向けて立ち去ってしまった。 翌日、萬三千と海棠が婚礼の誓いをしようとした瞬間、全身に血潮を浴びた一刀があらわれ、衆人を驚愕させた。一刀が振り絞るように皆に問いかける。「どうしてなのだ? どうして母を殺す必要があったのか。」 昨晩、海棠の言葉に心を乱された一刀は、水月庵に戻ったが、突然、多数の刺客が襲ってきて、母は彼をかばって刃に倒れた。すべてを失った一刀は、海棠の手で殺してほしいと願う。そこに怒りに燃えた神侯が現れ、一刀を取り押さえ、速やかに連れ去るよう命じた。その瞬間、婚礼の飾りを脱ぎ捨て、一刀のそばに寄った海棠は、短刀を自らの首にあて、「彼とともに行かせてください、さもなくばこの場で自害します」と神侯に訴えた。三千はなすすべもなく、神侯に海棠の願いを聞き入れるように頼む。神侯は、二人の出奔を認めたが、すぐに罪人として追っ手をやると冷然と告げた。 二人はとある荒野に逃げ延びたが、神侯によって経脈を断たれた一刀は、もはや身動きができなくなっていた。彼は海棠に、神侯の手を逃れて、自分たちの行けるところはどこにもないと寂しく語る。海棠はすぐに一刀の心情を察した。二人はこの場でともに死ぬ覚悟を決めたが、絶望の中にも不思議と甘美な思いが二人の心を満たした。自然と唇を重ね、目を閉じたそのとき、黒衣の一団が現れ、丁重な態度で二人に帰京を求めた。 その頃、素心は意を決し、成是非に自分が生母であること、父は古三通であることを告白した。最近の神侯の言動に疑念を抱きつつあった成是非は、母を「護龍山荘」から連れ出そうとするが、神侯にはばまれる。 成是非が皇帝の召還に応じて雲蘿とともに宮中に赴くと、すでに天涯、飄絮、一刀、海棠の姿があった。皇帝は、神侯が皇位簒奪の陰謀をめぐらしていると明かし、彼ら四大密偵が「護龍山荘」から袂をわかって、改めて自分に従うことを求めた。天涯は、神侯が忠義の仮面をかなぐりすてたことは承知していたが、義父として養育の恩ある人と敵対することはできず、飄絮とともに蛇島に帰ることにする。 残された4人は、皇帝に忠誠を誓うことを決意するが、神侯の野望を阻止する手立てを相談しているさなか、大臣の傅鉄城が彼らの面前で刺客に殺害される。海棠はとっさの機転で、首領格の人物を密かに追跡する。 意外なことにその行く先は天涯の家であり、覆面の刺客は飄絮だった。彼女は不敵な笑みを浮かべて海棠に言い放つ。数々の要人の暗殺を一刀のしわざに見せかけたのは、すべて自分が、父である柳生但馬守の命令でやったことであり、父は神侯の皇位簒奪の野望に加担していたこと、四大密偵ははじめから神侯の深謀の道具に過ぎなかったこと、ただひとつの誤算は、自分が本当に天涯を愛してしまったこと・・・。驚愕する海棠の一瞬の隙を突いて、飄絮は海棠に致命傷を負わせ、悲痛と慙愧のうちに海棠の意識は遠のいていった・・・。 一刀らが深い悲嘆のうちに海棠を葬った後、萬三千は、神侯のもとに赴き、海棠の死の責任を神侯に問い詰めた。このとき神侯は、かつて古三通が太湖で八大門派の多数を殺戮したとされているのは、実は自分の仕業であり、それを三通に転嫁したのだと明かす。神侯は若き時分から自己の能力を恃み、正当なる皇位継承者はほかならぬ自分であると考えており、「護龍山荘」の設立もその野望の実現の手段であった。神侯は驚愕する三千をあっという間に殺してしまう。その後、柳生但馬守が天涯の前にあらわれ、激戦の末に天涯は但馬守を倒した。 天涯は、海棠が死の直前に残した手がかりから、飄絮が犯人であると察知した。飄絮は、父への忠孝の義務と、天涯への愛情との板ばさみになった自分の内心の苦衷を訴えた後に自害する。そこに駆けつけた一刀らの面前で、天涯は妻の所業の責任をとって自刃しようとするが、一刀がそれを阻む。一刀はこのとき初めて、天涯に対するこだわりを捨てて、彼を師兄と呼ぶことができた。 段天涯、歸海一刀、成是非、雲蘿郡主は、ついに神侯と決着をつけるべく「護龍山荘」に乗り込む。しかし、天涯、一刀、是非の力を合わせても、神侯の武術には及ばず、彼らの敗色はしだいに濃くなった。そのとき、雲蘿が錦の箱を神侯に突きつける。中を一瞥した神侯はぞっとするような叫びをもらして、狂乱の体を示した。そこにあったのは、なんと素心の首だった。彼女は神侯の野望を阻止するため自ら命を絶ち、首を神侯に差し出すよう雲蘿にゆだねたのであった。皇位につき彼女を后にするという神侯の大望はむなしく潰えた。彼は「護龍山荘」にしつらえた玉座の中で、三人の刃を受けて絶命する。「これで終わった」という天涯の一言に、一刀と是非は思わず瞑目するのだった。 その後、「護龍山荘」は皇帝の命により、「護民山荘」と名を改め、天涯と一刀を荘主として、民衆を護る組織に生まれ変わることになった。 |


